50/50 フィフティ・フィフティ

(2011年 / アメリカ)

酒もたばこもやらない“普通”の青年アダムに突然告げられた病気は“ガン”だった。27歳という若さで、生存率50%のまさかの余命宣告。その日から、アダムの生活環境は一変する。

生存率50%とは奇跡が起きる確率の裏返し

2012年にがんで死亡した人は36万例にのぼり、男性が47万例、女性が34万例だそうです。死亡数が多い部位は、男性が肺、胃、大腸の順で、女性は大腸、肺、胃となり、男女ともに同じような部位ががんに罹患していることがわかりますが、大きな違いといえば女性が5位に乳房に来ているくらいで、部位別では男女差はほぼないことが見て取れます。ただ、年齡によるがん死亡を見てみると、男女差の違いが見えてきます。男性は、40歳以上で消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)の死亡が多くを占め、70歳代以上ではその割合はやや減少し、肺がんと前立腺がんの割合が増加する。女性は、40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多くを占めるが、高齢になるほどその割合は減少し、消化器系(胃、大腸、肝臓)と肺がんの割合が増加とのこと。がん死亡の王道(不適切な言い方かもしれませんが)である胃や大腸、肺のがん死亡は男性が比較的若い年齢で、女性は遅い。その反面、乳房や子宮など女性特有のものは割りと若い年代に襲われるようです。

では、全人口に対するがん死亡率はどうでしょう。これは男性26%(4人に1人)に対し女性16%(6人に1人)で、がんに罹患する確率は、男性60%(2人に1人強)、女性45%(2人に1人弱)となっています。これは男女問わずかなり高い確率だということがいえると思いますが、なぜ日本人はがんで死亡する確率が高いのか。これは、がん予防や早期発見に対する国を挙げての取り組みが、海外諸国に比べてかなりの年数において後れを取っているからだと言われています。欧米ではがんの検診受診率が軒並み70%超(特に乳がん、子宮がん)なのに対し、日本のそれは20~30%だとのこと。これではがんの早期発見ができようはずがありません。また、世界一の長寿国である日本においては、がん以外の疾患によって死亡していた人が、医療の進歩によって生き延びるようになったがために、がんでの死亡率があがった(がんは体の老化現象であるため)という事情もあるようです。

ともあれ、知らないうちに体ががんに蝕まれていて、医者に見てもらった時はすでに手遅れだったというケースが多々ありそうです。もしかしたら、僕も近いうちにそうなるかもしれません。レントゲンで黒い腫瘍を見せられながら、「あなたの余命は○ヶ月です」とか「あなたが生き残れる可能性は○%です」と、事実上の最後通告を突きつけられたら僕はどうするでしょう。潔く運命に従って残りの人生を面白おかしく生きるか、がんに打ち勝つため抗がん剤を打ちまくるか、それともルルドの泉とかの神がかり的なスポットに参詣しまくるか。どれを選ぶか実感として湧いてきませんが、少なくとも理性的に向き合うことはできず、本能的にやけになって生を放り出すか、どんよりとした悲壮感で日の目を見ない暮らしをするか、どちらかだと思います。

その点、この映画の主人公アダムはとても恵まれていると思います。もちろん映画なので話の内容的には都合のいいものとしてつくられていますけど、もし僕ががん死宣告されたとしても、いままでなかったほど楽しくエキサイティングに生活し、それでいておとなしく抗がん剤を投与するなんていう、軽い風邪をひいたみたいな感覚で生きていけるのはとても幸せなことだと思います。だから、アダムとしては50%の生存確率という運命に晒されながらも、自分の前に次々と現れる親友、恋人、家族、ナンパした女、セラピストの若い女性などにより、本来であればがんのことを重く考えなければならないのに、めまぐるしく移り変わるリアルな生活のせいであまり深刻に考えることができない。その結果、手術は成功し、アダムは元気になるという映画みたいな(映画だけど)展開で終わるのです。

よく、がんを克服した人の奇跡体験なんかを見たり聴いたりすると、たいていこんな感じで普通の生活をしてたらいつの間にかがんが消えていたりなんてします。真剣にがん治療に励んでいる人には申し訳ないのだけれど、もしかしたらこの映画の主眼はそこだったのかもしれない。別にがんだからといって深刻に捉えることはないし、治療するにしても気張る必要はまったくない。気楽に臨みましょうってことなのでしょうか。ま、そういうセリフはがん検診受けてから言えってことなのでしょうけど。


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