アメリカン・ハッスル

(2013年 / アメリカ)

完全犯罪を続けてきた天才詐欺師アーヴィンと、そのビジネス・パートナーにして愛人のシドニー。遂に逮捕された二人は、FBI捜査官リッチーに、自由の身と引き換えに捜査協力を強いられ…。

騙す人と騙される人

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いまも昔も、善良な市民から金品を巻き上げる詐欺師の存在が途絶えたことはありません。人を騙して利益を得ようとする人がいない社会など、どんなに治安の良い国でも実現することは不可能。そのうえ、時代が進むにつれて手法はさまざまに変化し巧妙化していくので、警察とのイタチごっこは終わりません。一方で、詐欺師がターゲットとなる人を騙す心理的アプローチはだいたい共通しています。つまり、「ターゲットが騙されたと気づかない状態」にすることです。ここに至るプロセスは非常に徹底していて、騙された人がいつまでたってもそれと気づかないばかりか、たとえ気づいても立証するのが難しく泣き寝入りするケースが相当数に及ぶほどですから。ここ最近の日本で多いのは、振り込め詐欺や還付金詐欺、フィッシング詐欺ですね。また、入信させて高額な商品を買わせる悪徳宗教、財産を奪い取る結婚詐欺など、従来からあるタイプの詐欺も健在で、どんなに典型的で周知徹底されたものであっても騙されてしまう人は騙されてしまうのです。

詐欺が成立するには、当然のことながら騙す人と騙される人がいるわけですが、では、それぞれどういうタイプの人が当てはまるのでしょうか。シンプルに書くとこうなります。騙す人とは「自分がウソをついているという自覚がなく自信たっぷりに話す人」で、騙される人とは「自分は絶対に騙されないという自信過剰な人」なのだそうです。もちろん、ほかにも両者の特徴はいくらでも挙げることができますが、プロの詐欺師はどんなにガードが固い人に対してでも、心のほころびを見出して一気に信じ込ませる技量を持っています。自信のない人のほうが簡単に落ちるのかと思いきや、自信家のほうが一度信念を抱いたら曲げないので落とすのは早いとのこと。なんだか、僕ら一般市民はもう為す術がないのかと不安になってしまいますね。振り込め詐欺だっていまだに根絶されていないのもうなずけます。では、本当に詐欺師に騙されることを防ぐことはできないのでしょうか。

詐欺師対策において、いちばん単純で効果的な解は、詐欺師からのアプローチを避けること。これは心理的な意味ではなく、物理的な接触を避けるということです。身なりが爽やか系で初対面であるのにすぐに打ち解けてくる人は、詐欺師である可能性が高いです。「私は詐欺師です」と言わんばかりの見た目をしている詐欺師なんているわけありませんが、ごく自然な風貌と言葉遣いで急に接近してくる人は特に警戒すべき。有名人と知り合いだと言ってきたり、思わずその気になってしまうほど褒め上手だったり、聞いてもしない弱みを見せつけてきて同情を誘うなど、彼らは巧みにあなたの心のなかに入り込もうとしてきます。どこかのタイミングで騙そうとしているということに気づいて振り払えば被害なしで済みますが、少しでも彼のペースにはめられて信じてしまったら、もう引き返すことができないと考えたほうが良いと思います。かと言って、世の中のすべての人を疑うことほど疲れることはありません。普通にしていればいいのですが、ただ「こんなうまい話あり得ない」と思ったら、すぐに身を守る心がけを忘れないことが大事なのではないかと思います。

そう言えば、大学時代、やたらと「一生のお願いだから!」と言って頼み事をしてくる同級生がいました。その大げさな物言いに僕はいつも笑って無視していたのですが、人のいい友人はそのたびに彼の言うことを聞いていました。知った者同士だったのでトラブルになることはありませんでしたが、僕はそいつのことは絶対に信じられないと直感しました。そいつに悪気があってもなくても、一度でも応じてしまったら面倒くさいことになるとわかっていたからです。ちなみに、その人のいい友人から、彼がしつこいと何度も泣き言を聞かされたのを覚えています。この映画は、そんな程度の低い話ではなく、プロの詐欺師が政治家を罠にはめるというストーリーですが、たぶん根底は同じです。弱みを見せて(泣きを入れて)信じ込ませ、意図した結果を得る。人を騙すにはイリュージョンなんて必要ないし、プロでなくても誰でも詐欺師になり得るんだと感じた作品でした。


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