ブラックホーク・ダウン

(2001年 / アメリカ)

1993年10月3日。東アフリカに位置するソマリアの首都モガディシオに、100名の米国特殊部隊の兵士たちが舞い降りた。彼らの任務は独裁者アイディード将軍の副官2名を捕らえること。しかし、2機の最新鋭ブラックホーク・ヘリが撃墜されたことから、兵士たちの運命は一変する。

ゲームの中の敵兵が実弾を撃ってくることは杞憂か

ブラックホークダウン

1993年10月3日、混迷するソマリア情勢に解決策を見出だせずにいた国連をよそに、アメリカ軍はソマリア民兵のアイディード将軍の副官2人を捕らえる独自作戦を挙行。30分という短時間で片がつくという公算を立てていましたが、作戦中に中型多目的軍用ヘリコプター・ブラックホークが撃墜されたことで様相が一変。以後、モガディシュ市内に取り残されたアメリカ兵を救出する作戦が行われることになります。レンジャー部隊ならびにデルタフォースと、ソマリア民兵との戦闘は15時間にもわたり、19人の死者(マレーシア兵の国連軍兵1人含む)を出します。この戦闘の残酷な映像が全米に流れると、アメリカ国民の間でソマリア撤退を求める声が大きくなり、ビル・クリントン大統領(当時)は、翌年ソマリアからの撤兵を決定しました。和平が破綻したソマリアでは国自体も分裂し(ソマリア、ソマリランド、プントランド)、2011年には80万人以上が難民となった大干ばつに見舞われるなど、その荒廃ぶりは世紀末が連想され“リアル北斗の拳”などと形容される地域となってしまいました。

この映画は、のちに「モガディシュの戦闘」と呼ばれる、アメリカ軍とソマリア民兵(市民)との間で繰り広げられた一連の戦闘行為が描かれています。ほぼ全編にわたって銃撃戦を中心としたリアルな戦闘の模様が活写され、切断された手や抉られた腹などの血生臭い凄惨なシーンもたびたび登場します。BGMはほとんどなく、音声として聞こえてくるのは、銃声と爆発、それに怒声と呻き声だけ。歓声や笑い声は開始数分のほんの一瞬を除いては、一切ありません。あっても、アメリカ兵を狙撃したソマリア民兵の歓喜の雄叫びくらいです。

人によっては、メタルギアソリッドやバイオハザードなどのシューティングゲームを思い起こすかもしれません。捕らわれた仲間を救出するため、限られた武器を手に単身敵地に乗り込むというシチュエーションは、まさにこうしたゲームの定番シナリオであり、狙撃されたら即死するというスリルを味わいながら敵兵を撃ち倒していく臨場感に浸れることが魅力のひとつでしょう。かくいう僕も、そういったゲームには大いに魅力を感じます。だから、この映画をゲーム感覚で観てしまうという人がいることは否定しないし、この平和な日本で、空調の効いた部屋で菓子を頬張りながらゲーム三昧の毎日を送っていたら、そう感じてしまうのは無理もないというものです。また、自分が操作するディスプレイの中のキャラクターが死にそうになったら、速攻でリセットボタンを押して最初からやり直せばいいと考えてしまうのもごく自然な発想だと思います。

ただ、ゲームの中で飛び交う銃弾や砲弾が実弾となって自分のところに飛んできたとしたらどうなるのか、考えたことはあるのか、または実際にそうなる可能性がこの日本に住んでいてもゼロではないということを意識したことがあるのかを問うてみたいです。実弾が当たれば痛いし、動けなくなるし、血が出ます。当たりどころが悪ければリセットボタンを押す前にその場で死にます。ゲームでは回復のアイテムを使えば傷はすぐに癒えるし、死んだとしても残機があればゲームを続行できます。でも、実際の戦場で凶器や銃弾に身を貫かれても、そんな便利な仕様など存在するはずありません。それに、たとえゲームの中では百戦錬磨のプレイスキルだとしても、ソマリアでは何の役にも立ちません。

ゲームに没頭するということは、ストレスを解消してくれる効果があるだけでなく、創造力の喚起というクリエイター精神の萌芽を助長してくれることもあります。しかし、その前提となるのが「現実を忘れる」ということです。ゲームに没頭するあまり現実と虚構の区別がつかなくなり、実社会で犯罪を犯してしまってもそれと気づかないというケースをよく耳にします。犯人が「遊び半分だった」と言い訳するのはだいたいそのパターンです。現実を基にしたとはいえ、そもそも映画自体、誇張や脚色でできているものですが、この映画を観ながら「オレだったらあいつをライフルで仕留める」「オレだったらあいつにこっそり近づいてCQCで倒す」「オレだったらここにクレイモアを仕掛ける」などとゲーム脳で独り言を言ってしまうとしたら、ちょっと気をつけたほうがいいかもしれません。


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