カテゴリー別アーカイブ: サスペンス

スイミング・プール

何かを書いている最中、当初思い描いていた展開とはまるで違った方向へと筆が勝手に進み、そのまま予期していなかった結末に至ってしまうことがよくあります。それは、何も考えず思いつきで何かを書きだした時よりも、書く前にプロットや登場人物像を綿密に設定した時のほうがその傾向は顕著に現れるのです。その理由としてよく言われているのが、ストーリー・人物設定が徹底的に練りこまれた物語というものは、その時点ですでに登...[続きを読む]

裏切りのサーカス

この映画が日本で封切られた時、チケットの半券を提示すれば2回目は1000円で観られるというキャンペーンが展開されていたようです。本国のイギリスで大ヒットしたという実績を引っさげての公開なので、配給会社もさぞや自信を持っていたことでしょう。では、本当に面白い映画なら、別にそういったリピーター割引など企画せずともリピーターが続出するはずなのですが、このケースのようにわざわざ「二度目、真実が見える」とい...[続きを読む]

プレステージ

新興宗教の勧誘や高額羽毛布団などの悪徳商法、高額配当を謳った投資詐欺、最近では振り込め詐欺など、世の中には人を騙すことで利益を得ようという勢力が後を絶ちません。騙す側の手口としては、一般的な社会常識をもってすれば簡単に嘘だと見破れる案件を、巧みな話術で信じこませて金を出させるといったところでしょうか。でも、いくら圧倒的に話術が巧みで、ターゲットの弱みや泣きどころを突いた誘導をしたところで、普通に考...[続きを読む]

バニラ・スカイ

大学生の頃までは、女の子にモテる最大の要素は「ルックス」だと本気で考えていました。つまり、顔が俳優やアイドル並みに美形で、最低でも175センチ以上の長身であれば、それだけで女の子から憧れのまなざしを受けることができるものだと本気で思い込んでいました。OLが結婚相手に求めた条件を高学歴、高収入、高身長とした、いわゆる三高は、さすがに理想の範疇であると青年期の僕も理解していましたが、やはり「ルックス」...[続きを読む]

バンク・ジョブ

株や投資信託、不動産、為替取引などの知識を持っていない人が、一日にして大金持ちになることができる方法といったら、単純に考えて強盗しかありません。それも、大金持ちの家に忍び込んで金庫破りをするか、銀行を襲撃して女性行員を脅して札束を紙袋の中に入れさせるといった力技に頼るくらいしかないでしょう。ほかにも、大企業幹部の子息を誘拐して身代金を要求するとか、爆破予告をして大勢の住民を人質にとって行政を屈服さ...[続きを読む]

パフューム ある人殺しの物語

街を歩いていて欧米人とすれ違った瞬間、鼻をつく香水の強い匂いに眉をひそめることがよくあります。日本人が好む、控えめでほのかに香るタイプではなく、まるでお風呂用洗剤みたいな、およそ外出向けとは思えないその激臭に目眩がするような不快感を催すこともしばしばです。もちろん、欧米人のすべてがそういった強い香水を身にふりかけているわけではないのですが、匂いの強弱はあれど、彼らからは何かしら香水の匂いを感じます...[続きを読む]

デジャヴ

実際は経験したことないのにどこかで経験したと感じてしまう「デジャヴ」という現象は、特別な心理状態や限界環境にあるなしに関わらず誰もが体験したことのある、ごく身近な現象と言えると思います。ふと「あれ、なんか前にも同じことあったような」と感じる瞬間というのは、ちょっとした霊的体験にも似た焦燥感や不安に駆られるものですが、だいたいのところ深く考えず「ま、いいか」で済まして忘れてしまうもの。痛みや体の不調...[続きを読む]

NARC ナーク

タイトルの「narc」とは、麻薬取締官、密告者、タレコミ屋という意味の俗語だそうです。麻薬取締官という正式な国家公務員と、裏社会で暗躍する無法者というイメージのあるタレコミ屋が同義になっているところが奥深いところだと思います。麻薬取締官の仕事は、文字通り麻薬の取締が主で、薬物犯罪の捜査や不正ルートの解明、正規麻薬の不正使用の監視などが含まれます。これは日本もアメリカも機関の違いこそあれ同じでしょう...[続きを読む]

スリーデイズ

まったく身に覚えがないのにも関わらず事件の容疑者として拘束され、ろくな裏付けも取らず乏しい情況証拠だけで犯人と断定されるケースが多々あります。これまで善良な生活を送っていた無実の市民がいきなり犯罪者される場合、テレビなどでは「誤認逮捕」あるいは「冤罪」として混同して報道されますが、そもそも両者は異なる用語です。誤認逮捕は、逮捕行為の対象を誤った場合に使われる用語で有罪か否かは未決の状態。冤罪は、無...[続きを読む]

アルゴ

なんの予備知識なく見始めたのですが、だんだんとストーリーを追っていくうち、「あ、これは政治的な宣伝用の映画なのかな」と思うようになりました。この映画は、イランのアメリカ大使館が占拠された実話を基につくられているのですが、アメリカがイランを敵性国家として圧力をかけているこのタイミングで上映、しかもアカデミー賞まで取らせてしまうなど、何らかの政治的意図を勘ぐらざるを得ないのは当然でしょう。 そう...[続きを読む]