カテゴリー別アーカイブ: た行

トト・ザ・ヒーロー

広告やCMなどで「なりたい自分になろう」とか「未来の自分に会いに行こう」とかのキャッチコピーを見るたびに、現状の自分自身に満足していないことを前提として話を進めているのだなと感じます。もちろん、こういう広告を打つ側も商売なので、たとえ私はいまの自分で不都合はないと主張されても、その人の気など知らず、いやもっと素敵なあなたになれますよと畳み掛けるのでしょうね。ですけど、実際こんな夢みたいなこと聞かさ...[続きを読む]

ダラス・バイヤーズクラブ

医薬品は一製品あたりの製造原価が安く、製造業の中でも利益率が非常に高い産業だそうです。したがって、画期的な新薬を開発できれば、世界市場で年間数千億円を売り上げることも決して不可能ではありません。しかし、ひとつの新薬の開発するのに、数十億円から数百億円という莫大な研究開発費が必要とのことで、製薬会社の企業売上高に占める研究開発費の割合は、電気・電子・精密機器・自動車産業が5%前後であるのに対して19...[続きを読む]

台北の朝、僕は恋をする

台湾に旅行に行った時、まず思ったのが「日本とそんなに変わらないな」ということでした。もちろん、食べ物や建物の様子は現地特有の独自性を持っているのですが、僕が変わらないと思ったのは、人。短い期間ながらも台湾各地を回った中でいちばん記憶に残っているのが、自分自身が外国人だと意識するのを忘れてしまうくらい自然に過ごせてしまう居心地の良さです。その居心地の良さを感じさせる空気を醸し出しているのが、台湾人そ...[続きを読む]

チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~

ふと「あれ、自分って何なんだろう」って思って立ち止まることがよくあります。別に、前後不覚に陥ったとか正体を失ったとか、そんな大げさなことではないのですが(ま、それに近いですが)、自分が何という名前でどんな人生を送ってきてどんな家族構成をしているのかが瞬間的に頭から消え失せてしまうことがあります。そういうのはたいてい一時的な現象で、ほんの少しだけ時間をおけば「何だったんだ、いまの」という感じに元通り...[続きを読む]

扉をたたく人

ニューヨークに観光で行った数日間、地下鉄の構内で楽器を演奏している人をよく見かけました。ニューヨークの地下鉄では、ホームや構内での演奏を希望するミュージシャンはまずオーディションを受ける必要があり、それに合格した人が演奏場所を押さえることができるとのことで、タイムズスクエアなどの大きな駅でオーディションを通過したと思われるレベルの高いバンドによく遭遇しました。地下鉄利用客も彼らの演奏を歓迎している...[続きを読む]

地下鉄のザジ

田舎生まれの僕にとって東京そのものもそうですが、発達した交通機関にはちょっとした恐怖を持っていました。高速道路なんかは道路の上にまた道路が敷かれているし、地元をかすりもしない新幹線はその発着点となっていてビュンビュン走っているし、地元で時間帯によっては1時間に1本しかないバスは10分おきくらいにしかも定額で運行されているし、電車に限っては路線図を見ても何がなんだかさっぱりわからない。とにかく、東京...[続きを読む]

デジャヴ

実際は経験したことないのにどこかで経験したと感じてしまう「デジャヴ」という現象は、特別な心理状態や限界環境にあるなしに関わらず誰もが体験したことのある、ごく身近な現象と言えると思います。ふと「あれ、なんか前にも同じことあったような」と感じる瞬間というのは、ちょっとした霊的体験にも似た焦燥感や不安に駆られるものですが、だいたいのところ深く考えず「ま、いいか」で済まして忘れてしまうもの。痛みや体の不調...[続きを読む]

ディック&ジェーン 復讐は最高!

会社が突然倒産したりリストラされたりして失業するという悪夢は、どんなサラリーマンにもあり得ることであり、それは大企業に務めるエリートと呼ばれる高給取りでも同じこと。殊に、バブル崩壊後、日本型の終身雇用制が崩壊し、欧米並みに人員整理が非情になった雇用事情を鑑みればなおさらです。完全失業率がどんどん上がっていくと同時に、自殺者数も増加していったことを無視することはできません。1998年に自殺者数年間3...[続きを読む]

Dr.パルナサスの鏡

豊島園だったかどこだったかは忘れましたが、ジェットコースターやフライングパイレーツ、メリーゴーランドなどの遊園地の花型とも言える乗り物に衆目が集まる一方、僕は鏡の小屋(たしかミラーハウスという名前だったような)が好きでした。中に入ると、鏡だらけで自分の姿が奥行きを持ってあちこちに映っていて面白かったこと以上に、進んでいくにつれ次第にこの狭い部屋の中にいることを忘れ、まったく別の世界に降り立ったよう...[続きを読む]

トワイライト 初恋

僕は生まれてこのかた30年以上、一度も鼻血を出したことがありません。鼻血が出る原因として、血圧上昇、衝突などによる外傷、チョコレートの食べ過ぎ、エロイこと考えてたから、などいろいろ言われていますが、小学校、中学校時代でよく遭遇した鼻血の原因ナンバーワンは、ケンカでした。病気や感染症が原因で鼻からの出血が止まらないというケースは見なかったと思います。高校になってから以降、友人や同僚が鼻血を出している...[続きを読む]