セレステ&ジェシー

(2012年 / アメリカ)

仲良し夫婦のセレステとジェシー。だが、女社長のセレステは売れないアーティストのジェシーと「永遠に親友でいたい」と離婚を決意し…。

恋愛のさじ加減はほどほどに

恋人同士、永遠に相思相愛でいられると確信し合っているとしたら、それは本当に幸せなことだと思います。いえ、別に皮肉ではなく、僕らは、たとえ付き合い始めは猛烈に惹かれ合っていたとしても、時がたつにつれて熱も冷め、やがてカップルが解消されていくということを繰り返してきているからです。特に10代の若い頃は、相手を選ぶ際、外見がいいとか、スポーツ万能だからとか、服装がオシャレだとか、甘い言葉に酔い痴れたとか、たいてい無計画なフィーリングで決めることが多いため、熱はあっという間に冷めます。末期になると、互いが互いに失望し、これまでの反動で怒りを覚え、相手の傷つくことを平気で言ったり時には暴力を振るったりしてしまいます。若いからです。悲恋だなんて大げさなものではなく、ただ若いからで説明がつきます。だから、歳を重ねても恋愛をするたび心の傷が増えて、異性との出会いに臆病になってしまうという人は、理屈ではわかっていても心のどこかで「恋に恋する」未熟さが残っているのでしょう。それでも、学生時代に初めて付き合った人が永遠の伴侶になるというケースもあるので、恋愛は精神医学上ではなく、単にタイミングの問題なのかもしれませんが。

ともあれ、相当の人たらしでない限り、誰とでも円滑な人間関係を築くことは難しいですし、まして異性との一対一の関係であればなおさらです。噛み合わない双方を補完し合っていくことを幸せに感じて初めて恋愛が成功していると言えるわけで、何も始まってない段階から「結婚を前提に付き合おう」なんて言われたら誰だってドン引きしてしまうでしょう。ま、それでも恋愛は脆くも崩れるもの。ゴールイン間近と報道された芸能人のカップルが破局したなんて話は呆れるほど聞きます。つねに衆目に晒されている芸能人を別格にするまでもなく、割りと自由に愛を育める時間のある学生連中だって同じことを繰り返しています。原因はいろいろ考えられます。おそらく、互いを見つめ合って互いの将来のためにならないことを納得した上で別れたなんていうロマンティックすぎる理由ではなく、もっと俗っぽいことでしょう。思っていた人物像とかけ離れていた、他の人を好きになって相手への興味が失せた、相手が浮気をして大喧嘩して別れた、単純に熱が冷め自然消滅する形で互いを忘れていった、など。喧嘩や裏切りに遭って別れるのはたしかにつらいですが、互いに冷めていつの間にか恋愛関係が解消していたというのは、ある意味とても円満な結末なのかもしれません。

でも、当然ではありますが、本当に円満な別れ方は、互いが互いの主張を認め合って万事納得したうえで後腐れなく関係を終わらせることです。そんな理想的すぎる結末、あり得るのでしょうか。ニュースを見ていると、別れ話のもつれから傷害事件に発展したり、ネットで相手の誹謗中傷をまき散らしたり、思いを断ち切れないあまりストーカー行為をしたりといった事例がいくつも目に飛び込んできます。最近も、フランスで行方不明の日本人留学生が、恋人との別れ話の末に殺害された可能性がある事件が起きています。こうしたケースを鑑みると、恋愛をしたら事件になるリスクも覚悟しなければならないのかと身構えてしまいそうですが、面倒事が起きるのは互いの理解が及んでいない場合がほとんどでしょう。僕が大学生だった時ですが、破局間際の友だちカップルが別れるから仲介してほしいと頼まれました。わざわざ遊園地に連れて行って話し合わせるというセッティングをし、彼らは長時間腹の中身をぶつけ合った後(途中で僕は退出)、答えが出たと僕を呼び寄せました。彼らは満面の笑みでした。このまま生ぬるく関係を続けると伝えてきました。その時、僕はなんだそんなものかと拍子抜けしたことを覚えています。恋愛関係を継続するのに必要なことは、外見でも話術でも服装でもなく、双方が自らの主張を包みなく伝え、相手はそれを受け入れられずとも理解しようとする努力を示すことなのだと。

そんなことができたら、世の中から痴情のもつれ事件簿がなくなるという声が聞こえてきそうですが、一向に消える気配がないということはそういうことです。出会いから距離を置くようになり別れを選択するまで、一貫して友だちのように仲良しでいられる関係なんて、映画の中だけですよね。きっと……。


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