シカゴ

(2002年 / アメリカ)

1920年代のシカゴで、スターを夢見るロキシーが愛人殺害で逮捕される。彼女が入った留置所には、かつてのキャバレーのスターで、夫と妹を殺したヴェルマがマスコミの注目を集めていた。しかし、人気弁護士ビリーがロキシーを担当し、世間の目は彼女に注がれる。

狂気あふれる街が生んだ魅惑の音楽

シカゴという街は一度も訪れたことがないため、そのイメージとして、どうしても「マフィア」「ギャング」といった映画の舞台そのものを連想してしまいます。その主因が「アンタッチャブル」。密造酒をめぐってアル・カポネ一味とFBIが闘いを繰り広げる作品で、ラストで描かれるユニオン・ステーションでの乳母車の一幕は映画ファンならずともご存知なはず。こんなイメージしかないので、僕にとってシカゴとは今でも昼夜問わず銃弾飛び交うギャングの街という認識でしかないのですが、調べてみたところシカゴは大都市としては安全な街なのだそうです。かつてマフィアの巣窟だったという汚名を返上すべく、行政が治安維持に力を入れた結果とのこと。もちろん、地区によって観光客のみならず一般人が立ち入ってはいけない危険なところもあるので注意が必要ですが、そこは他の都市も同じこと。とにかく、シカゴはもうマフィアの街ではないようです。

では、シカゴってどんな街なのという話ですが、音楽、特にシカゴ・ブルースと呼ばれるジャンルの聖地だとのことです。ブルース発祥の地であるミシシッピーから、マディー・ウォーターズらのブルースマンがやって来て、エレクトリックのバンド・スタイルのブルースを演奏したことでシカゴ流のブルースが確立。この流れは、ローリンズ・ストーンズ、ジミ・ヘンドリックス、クリームなどのロック・バンドに影響を与えました。また、シカゴはブルースだけでなくジャズが盛んな街で、かのルイ・アームストロングもニューオーリンズから拠点を移したほどで、街には数えきれないほどのジャズバーがあるそうです。バーで演奏するバンドマンのほか、公園でライブをしている人たちもハイレベルとのことなので、音楽好きの方にはたまらない魅力を持った街だと言えるでしょう。

さて、この映画は、まさにそういったシカゴが培ってきた創造性あふれる音楽(特にブルース、ジャズ)が散りばめられた作品だと言えるのではないでしょうか。元がミュージカルなので本編の至るところに歌が入り込むのですが、冒頭の「All That Jazz」で度肝を抜いてから息もつかせぬうちに、アップテンポなナンバー、しっとりとしたバラード、喜劇のようなコミカルな曲、艶のあるタンゴなど、次々に畳み掛けてくるので、一気に画面に引き込まれてしまいます。しかも、ひとつひとつのナンバーの演出が素晴らしく、また出演者の演技もずば抜けているため、音楽の知識だとか鑑賞眼などは度外視して深く考えずに楽しめます。実は、僕はこの映画をすでに何回も観ているのですが、一度ハマってしまったら定期的に何度でも観返したくなどほどの中毒性を孕んでいます。音楽は人を選ぶという言葉がありますが、この映画に関しては逆に音楽に無理やり引き込まれてしまう感じなので、半年後くらいにはまたDVDの棚から取り出すことになるのだろうと思います。

音楽のジャンル、ナンバーひとつひとつにはそれをつくった人の世界観が込められているわけですが、ことシカゴ発の音楽に関しては、特別深い世界がつくりあげられているような気がします。その世界をつくったのは、高名なジャズマンだったかもしれないし、多種多様な民族だったかもしれないし、暗黒の時代を生きたマフィアだったかもしれません。僕もいつかシカゴに行ってそうした世界にどっぷりと浸かってみたい。この映画を観返すたび、そう感じます。


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