最後のマイ・ウェイ

(2012年 / フランス)

世界的名曲「マイ・ウェイ」を作り、39歳で夭逝した人気ミュージシャン、クロード・フランソワの実像に迫る伝記ドラマ。

本物のマイ・ウェイとは振り返らない勇気を持つこと

最後のマイ・ウェイ

いつか僕が自分の人生を振り返るコメントを求められたとしたら、なんと答えるでしょう。たぶんですが、「まぁ、こんなもんだったんじゃないでしょうか」とか「あまり人生の良し悪しなんて意識することがなかったのでコメントしようがないですね」みたいな曖昧な返答に終始するのではと思います。でも、これは人生で成功を収め、良いフィニッシュを迎えようとしている場合に限ります。いまのままでコメントを求められたとしたら(そんなことあるわけないでしょうが)、「ちっとも面白みのない一生だった」「こんな人生、二度と繰り返したくない」という、かなりネガティブな発言になるはずです。ちなみに、現時点での自分の実績や社会的立場を客観的に見てもらったところで、「勝ち組」に判定されることは絶対にないと断言できるので、意図的に自己破壊をしたくてネガティブになっているわけではありません。

と言いつつも、人生で成功を収めた場合をシミュレートしてるわけですが、「我が生涯に一片の悔いなし!」と胸を張ることなく、控えめ、というより無関心にも聞こえる感想となっています。実感が沸かないからというのが正直な理由ですが、でも、やはり成功はしたけど失敗もあったしどっこいどっこいなんじゃないのというニュアンスで落ち着きそうです。自信を持って「自分の人生は最高だった」と言える人からは、成功も失敗もひっくるめて人生を謳歌できたという人間としての器の大きさを感じますが、それでも傲慢に聞こえる場合もあります。成功や失敗というのは自分自身の長所と短所から生まれるものであるので、それらを把握しているのか、もしくは見て見ぬふりをしているのかで、傲慢かそうではないかが分かれるのではないかと思います。それなら、たとえ成功者でも、傲慢に思われないよう、謙遜したコメントをしておけばいいのか。それもひとつの手かもしれません。でも、どうしても引っかかります。特に僕のようなタイプからは猛烈な反感を買うでしょう。

この映画の主人公クロード・フランソワは、人気絶頂のときに、のちにフランク・シナトラが英語で謳って世界的に大ヒットする「マイ・ウェイ」を生み出します。クロードは歌も踊りも一流だっただけでなく、音楽プロデューサーとしても有能だったようで、フランスでは彼の赴くところ必ず追っかけに取り巻かれるという大人気ぶりでした。つまり、彼は成功者でした。ただ、そんな彼にも短所はあり、女癖が悪い、カッとなると暴力を振るう、猜疑心が強いなどで、つねに周りを困らせていたのです。そんな中、クロードは39才という若さで感電死してしまいます。一気に駆け抜けてきた人生、これからもノンストップで突っ走っていったであろう彼の人生は終幕を迎えました。彼に、彼自身の人生を振り返る時間などなかったかもしれません。

たぶん、クロードのような人生がいちばん幸福なんだと思います。その反対に、自分の人生が勝ち組か負け組かをその都度判定しながら歩む人生というのが、いちばん面白みのない人生なんじゃないかと思います。いちいち自分の人生に一喜一憂するのも、ほくそ笑むのも、ケチを付けるのも、結局はヒマ人のすること。―――気がついたら死んでいた。それがいちばん幸福な人生なんじゃないかと思います。


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