ドリームガールズ

(2016年 / アメリカ)

1962年。音楽での成功を夢見るエフィー、ローレル、ディーナの3人は「ドリーメッツ」というグループを結成し、新人オーディションへの挑戦を繰り返していた。そんな彼女たちに大きな可能性を見出したのが、中古車販売会社を経営するカーティスだった。

ボーカリストの条件

ボーカルの入った音楽は、ポップスを中心に割とよく聴くほうですが、その歌手あるいはグループの「ボーカル」だけを意識的に聴くということはあまりないです。もちろん、曲に込められた意図を言葉で伝えようとしているのがボーカルなので、ボーカルこそ彼らが伝えたいことを受け取るためのダイレクトな媒体だとは思います。ですが、これは僕自身の好みの問題だとは思うのですが、バックミュージシャン含めたバンドのメンバーすべてが奏でる音こそがメッセージだと感じてしまうほうなので、特定の楽器だけ耳を傾けるということはほとんどしません。極端なことを言うと、ポップスにしてもクラシックにしてもソロパートに関心がなく、サビで一気に盛り上がるまで退屈を感じてしまうこともあったりします。なので、オペラみたいにソリストだけで進行する音楽(僕の勝手なイメージです)はまったく聴きません。たとえば、実際にギターやベースの奏者であれば技術向上などの学習目的でそれだけの楽器の音色を追うことはあるでしょうし、そうでなくても印象的なフレーズに魅了されてその楽器しか耳に入らないという場合もあるかもしれません。このあたりは完全に個人の好みの問題だしケースバイケースだと思いますので、だからどうだという話ではありません。僕が言いたいのは、いわゆるポップソングと言われる音楽ジャンルの中で、やたらと声量をアピールした歌を好まないということです。

R&B、ラップ、ヒップホップ、ゴスペル、ソウル……これらすべて僕はあまり興味を持たないジャンルです。なぜ興味がないのか、特に毛嫌いするほどの決定的な理由はないのですが、あえて答えると、高らかな声をこれでもかと言うほど張り上げて「私の歌を聴きなさい」とでも言いたげにドヤ顔をされるのが気に入らないといったところでしょうか。まったく論理性もないし説得力もないのですが、ほかのギターやドラムを差し置いて、自分だけ突出した主張をしているという印象があって独裁者的行為だとか思ったりもしています。他のメンバーを利用して自分がやりたいことをやりたいだけやっているというイメージです。さぞかしボーカリストは自己満足の頂点に立っているのだろうとも――。ですが、これは完全に僕の思い込みでした。単に音楽の好みとしてではなく、グループでの演奏、ひいてはボーカリストについての役割というものをまったくもって履き違えていたことに気づきました。どういうことかと言うと、僕自身がそういう立場に立ったということです。

「ボーカリスト」と宣言してしまうのはおこがましいのですが、その第一歩を踏み出したというニュアンスで捉えていただくとして、気付かされたことを正直に言います。ボーカルが(それ以外のすべての楽器についても言えるのかもしれません)、その独奏に観客の意識を引かせるということは相当努力しなければできないことです。音程がずれたりとか走ったりとかではなく、完成された音楽の中で、ボーカルが観客の心を鷲掴みにして目を離させないとしたら、そのボーカリストは本物のプロと言えるでしょう。ボーカリストの条件として、歌がうまいことは当然のことですが、ルックス、豊かな表情、メッセージ性、さまざま挙げられますが、なんと言ってもグループの「顔」になるので、そのグループの良し悪しに直接結びついてきます。だから、バックの演奏が素晴らしくてもボーカリストに魅力がなければ、グループ全体が厳しい評価となってしまいます。魅力がないということは、ルックスが良くても歌が下手だったりMCがつまらなかったり、そもそもやる気がなかったりということ。さらにはグループ全体の評価を一手に引き受けるなければならないので、強靭な意思も必要です。カラオケが得意というだけでほいほいボーカリストを名乗ることは不学にもほどがあるわけで(はい、僕のことです)、R&Bやラップなどのボーカリストは自我の塊なんかではまったくないわけであります。

こう言ってしまうと言い訳に聞こえてしまうかもしれませんが、僕はプロ志向ではないので、ポップスやロック、ひいてはR&Bやラップを含めた曲を歌いこなせるようになるには相当難しいでしょう。ですが、目標にはしたいです。なぜなら、彼らがとても眩しく見えるから。あんなに感情いっぱいに魂のこもった声を響かせて、観客を虜にしている。しかもとても楽しそうに。彼らに少しでも近づくことができれば、引っ込み思案な僕自身を変えていけるのではないかと本気で思わせてくれる姿がとても眩しいです。


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