ディック&ジェーン 復讐は最高!

(2005年 / アメリカ)

IT企業で働くディックは念願のマイホームを購入し、おまけに昇進も決定。まさに人生バラ色だった。ところが、ある日突然会社が倒産。思いつめたディックと妻のジェーンは、コンビニを手始めに強盗稼業を始める。

誰だって強盗になる可能性はある

ディック&ジェーン

会社が突然倒産したりリストラされたりして失業するという悪夢は、どんなサラリーマンにもあり得ることであり、それは大企業に務めるエリートと呼ばれる高給取りでも同じこと。殊に、バブル崩壊後、日本型の終身雇用制が崩壊し、欧米並みに人員整理が非情になった雇用事情を鑑みればなおさらです。完全失業率がどんどん上がっていくと同時に、自殺者数も増加していったことを無視することはできません。1998年に自殺者数年間3万人を突破するや、2012年には3万人を割るものの高い数を維持し続けています。これは失業して生活に行き詰まった中高年が無理心中的に自殺を選んだことのほか、20代30代の若い世代が将来に強い不安を覚えて自ら命を絶ったこともあるようです。

僕自身、リストラされたことはないのですが、前の職場を辞めてから次がなかなか決まらずやきもきする毎日を送ったことは何度かあります。計画的に時間と資金を管理しながら転職活動をしていれば問題はなかったのですが、時間ができたことをいいことに海外を放浪したりかなり放埒な生活をしていたので、気がついてみれば貯金が底を尽きかけていたというわけです。そうなってから、これはヤバイぞと真剣に焦りだし職探しに本腰を入れだすのですが、当然のことながら都合よく見つかるはずがありません。ですが、いよいよ来月の家賃払えないとなった頃になって良縁に恵まれるというパターンを繰り返してきました。そのたびに命拾いしてきた格好なので、これはもう幸運だったとしか言いようがありませんが、資金繰りがヤバいと感じた時には相当ぶっ飛んだことが頭をよぎったことは事実です。

失業率が上がると自殺者数も増加するというデータがありますが、自殺者数と同じく失業率の上昇と連動して増加する事象があります。それが「強盗」です。ちょっと前の話ですが、深夜になるとスタッフをひとりしか配置していないため強盗がやりやすいとして、すき家がターゲットになっていたというニュースがありました。銀行などの金融機関のほうが大金を手にできるはずなのですが、警備や防犯体制を強化しているところではなく、深夜アルバイトがひとりしかいない牛丼チェーン店を狙う。これは、初めてでも金を奪うことができるという強盗未経験者の発想ではないでしょうか。模倣犯が数多く出たことでも明らかです。ちなみに、強盗犯には40代が多いとのこと。40代と言えば、子の扶養だけでなく老親の扶養も期待される世代。人生に絶望して自殺するにも、残される家族のことを考えると死にきれず、このような行動に走ってしまうのではないでしょうか。

この映画は会社が倒産して生活が破綻した男性が、妻と一緒に強盗を働くというコメディです。コメディなので実際に金を奪うシーンはコミカルに描かれていて、ラストではそうした行為もすべて社長の放漫経営のせいだったという感じで収められています。映画なので突然の失業という悲劇を面白おかしく描かれていますが、実際の大企業倒産をモデルにしているとのことなので、笑うに笑えずシンパシーを感じた人は多かったのではないでしょうか。善良だった市民が、ある日突然生活のために強盗せざるを得ない状況に追い込まれる。僕も10円すら惜しむ極貧生活を送っていた頃、自動販売機やコンビニのATMを見かけるたびに目がギラついたことがあるだけに、その気持わからないでもありません。まだ本当の絶望を知らないだけで、僕自身いまだに強盗予備軍なのかもしれませんが。


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