火の山のマリア

(2015年 / グアテマラ、フランス)

農業を営む両親と共に暮らすマヤ人の少女・マリア。生活が苦しい両親は、コーヒー農園の主任で地主のイグナシオにマリアを嫁がせようとするが…。

高度な文明を築いた民族の末裔

この映画のテーマとなっているのが、南米の先住民族であるマヤ人。メキシコ南部から中央アメリカ北部にかけての地域に居住するアメリカ州の先住民族であり、多数派のスペイン文化に大きく影響を受けつつ伝統的な生活を続けています。「マヤ」と聞くと即座にマヤ文明を想起する通り、紀元前後から16世紀頃までスペインの侵略を受けるまでの大文明を築いてきた人たちのことです。そのマヤ文明の歴史をたどってみると、3世紀には低地一帯に一種の宗教的都市が形成され、巨大なピラミッド型の大神殿や祭礼場、裁判所、市場などが建造されたとのこと。またマヤ象形文字、天文学、暦などが発明され、国王、貴族、司祭を中心とした貴族政治が発達し、文明は800年頃に頂点に。その後、これらの都市は放棄され文化の中心はユカタン半島に移り、メキシコの影響を受けた文化が発展。1200年頃になると文化的に後退し、1450年頃の反乱によって焦土と化しました。そして、16世紀、コンキスタドール(スペイン語で征服者)の活動によってマヤ文明の全域がスペインに併合されました。現在では、かつて繁栄したマヤ文明の姿をユカタン半島に見ることができ、チチェン・イッツァ、テオティワカン、ウシュマル遺跡などの美しいマヤ・ピラミッドが観光客の耳目を集めています。

こうして調べてみると、カンボジアのアンコールワットをはじめとした世界の遺跡めぐりが好きな僕はとても引き付けられるのですが、その魅力は遺跡だけにとどまらず高度な文化にあることにも注目したいです。何と言っても、ピラミッド(文化というより遺跡ですが)。ピラミッドというとエジプトのそれが有名ですが、同時に謎が半分も解明されていないということでは一緒。強く関心が引かれますね。マヤ文明は統一国家を作らず王を抱く多くのネットワークの中で共存していたのですが、その中で最大級の都市だったのがティカルです。ティカルではピラミッドが盛んに建造され、鉄器を持たなかったため石器のみで造られたとのこと。現存しているピラミッドを見ると、頂上がエジプトのそれとは異なり平坦になっていることから祭壇の役割を果たしていたことは想像に難くないです。マヤ文明の都市は極めて厳密に東西南北を意識して作られており、ピラミッドも冬至になると真上に太陽が来るように設計されていたそうです。これはマヤ人が太陽に極めて敏感だったことから来ていて、日の昇る位置から1年の周期を計算して365日を割り出し、種まきや収穫の時期を計算していたから。この周期を知る人こそが王だけであったため、王は超自然的な力の持ち主として民衆から崇められ、権力を維持することができたのです。こうしたミステリアスなピラミッドは現在でも新たに発見されているというから驚きです。

ほかにも、マヤ暦やマヤ文字の発明、チョコレートを食べていたなど、考古学に興味のある人を引きつけてやまないミステリーに満ちているマヤ文明。その子孫である現在のマヤ人たちは、主にユカタン北部とグアテマラにて200万人ほどが生活しています。食事は基本的に自給自足で古代より変わらぬトウモロコシが主食、ユカテカ語と言われるマヤ独自の言語を話します。伝統的な茅葺きの屋根、細い木を組み上げて作られた壁の家で起居し、ハンモックで寝る。美しい織物で作られた民族衣装を身に着け、村によって柄や傾向が異なっているため、それによりどの村の住民であるかということが判別できるそうです。で、この映画では、火山の近くで生活しているマヤ人にスポットが当てられているのですが、マヤ文明自体に火山が深く関わっているのかと思い調べてみましたが特にそういったことはなく、どこの地域でもあるような自然を土着の信仰対象としているのだと思います。このように、魅力あふれるマヤ人あるいはマヤ文化ですが、アメリカなどの先住民と同じく少数派として肩身の狭い思いをしている現実は忘れてはなりません。観光してお金を落とすことが最大の貢献なのかもしれませんが、観光資源のない地域で暮らしているマヤ人にはどういう支援が必要なのか。少なくとも言えることは、彼らを興味本位の目で見ないことだと思います。


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