K-19

(2002年 / アメリカ)

米ソ冷戦下、ソ連の原子力潜水艦K-19は航行実験において、突然原子炉の冷却装置に故障をきたした。原子炉のメルトダウンも考えられた危機的状況に対して立ち向かう艦長と放射能の危険と隣り合わせで修理に奮闘する搭乗員の活躍を描く。

世界的メルトダウンは国際政治の闇の中で起きている

k19

動力に原子炉を使用する原子力潜水艦(以下、原潜)。通常動力型潜水艦がディーゼル機関を作動させてスクリューを回すのに対し、原潜は原子力すなわち核分裂により生成される熱エネルギーで水を沸かしてタービンを回すことでスクリューを回転させ航行します。原子炉の形式ですが、現在までのところ加圧水型原子炉(PWR)のみであり、別の代表的な原子炉形式である沸騰水型原子炉(BWR)が採用されたことはないとのこと。潜水艦においては海洋状態や気象、艦の機動によって船体が揺れたり傾いたりする可能性があり、沸騰水型では冷却水が炉心を十分に冷やせない事態が懸念されるからだそうです。ただ、加圧水型原子炉は構造がより複雑となり、特に蒸気発生器は複雑で脆弱な配管構造を持つため、初期の原潜でこうした構造がしばしば放射能漏れ事故の原因となったとのことです。ちなみに、原潜には長期間の潜航が可能、水中速力が大きい、燃料補給が必要ないなどのメリットがある反面、静粛性に劣る、浅い海域では海水温の変化で探知されることがある、コストが高いなどがデメリットとしてあげられます。

このように、原潜の動力として主に採用されている加圧水型原子炉は、一次冷却系と二次冷却系という分離された冷却系を有するため、放射性物質を一次冷却系に閉じこめることができます。沸騰水型原子炉のようにタービン建屋を遮蔽する必要がなく、タービン・復水器が汚染されにくいため保守時の安全性でも有利という側面があるのです。そのため原潜、原子力空母で標準的に、また世界の原発の70%ほどで使われているそうです。ただ、そうはいっても、福島第一原発事故(沸騰水型)の事例を鑑みても、加圧水型に軍配が上がったわけではありません。加圧水型は、沸騰水型に比べ高圧高温なので、配管が壊れやすく冷却機能喪失からメルトダウンまでの時間が圧倒的に短い。沸騰水型は格納容器に窒素が充填されているが、加圧水型は空気であり、水素が発生すれば爆発の危険性が高い(ベントが付いていないから圧力を逃がすことができない)。といった側面もまたあるからです。

では、原潜運用中に動力に事故が起きたらどうするのでしょうか。それはこの映画を観てもらうか、福島第一原発所長・吉田昌郎氏をはじめとするフクシマ50と呼ばれた人たちのことを調べてもらえればよいと思います。そんな中で気になるのが、旧ソ連時代に建造され老朽化した原潜(の原子炉)が、少なくとも日本海に4基、北極海に17基投棄されたと報じられたこと。これが事実なら、放射性廃棄物を海洋投棄していることになります。資源エネルギー庁によると、日本では、使用済核燃料を処理した後に生じる高レベル放射性廃棄物はガラスと混ぜて固化処理し、30~50年程度冷却のため貯蔵を行った後、地下300m以深の地層中に処分することとされるそうです。手を加えているという点では、地層処分のほうが確実なのかもしれませんが、そうするしかないのでしょう。魔法の液体と混ぜれば放射性物質が消えてなくなるなんてことはないのですから。

さらにもっと怖いのが、この映画で描かれていたように、たとえ原潜で事故が発生して近くの海域に敵国の艦船がいたとしても「機密事項を晒すことになる」として救援を求めようとしないこと。現在はわかりませんが、少なくとも冷戦中はこうした事故により、公表されず極秘に沈没させられ投棄された原潜が結構あったのではないでしょうか。そう考えてみると、これから次々に第2第3のK-19が明らかになってくるのではないかとゾッとせずにはいられません。


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