エンド・オブ・ホワイトハウス

(2013年 / アメリカ)

7月5日独立記念日の翌日、ホワイトハウスはテロリストの陸空同時の奇襲により占拠されてしまった。一瞬にして世界の平和と人類の命が人質になった時、たった一人の男が侵入に成功する―。

国家中枢を崩壊させるには

アメリカのワシントンDCに観光に行った時、やはりいちばんの目当てはホワイトハウスでした。ニューヨークから高速バスでワシントンDCのユニオン駅に到着し、スミソニアン系の博物館・美術館をいくつか回ってからリンカーン記念館まで足を運び、観光最後の締めにホワイトハウスへと向かいました。ワシントンDCの主な観光名所はほぼひとつのエリアに固まっているとはいえ、なにせひとつひとつの区画が広大なので、ホワイトハウスを目指す頃にはもう足がヘトヘト。帰りのバスの時間も微妙に近づいてきていたので今回はお預けにしておこうかなと弱気になりかけましたが、本当に再訪するのかの確証はないわけだし、ホワイトハウスを見るためにワシントンDCに来たことを思い返し気合を入れ直しました。緑の芝生に敷き詰められた公園の向こう側。あ、見えてきました。柵のずっと奥、高く噴き上がった噴水の向こうにコロニアル調(フェデラル様式というそうです)の白亜の建物が。でもそこまでです。柵の位置から見られるのは、正面玄関の吹き抜けくらいで、あとは緑の木々に遮られていてその全貌を拝むことはできません。それだけでも感動ものではありましたが、やはりもうちょっと間近で見たかったのが正直な感想。でも、アメリカという超大国の大統領が居住する建物なのですから、むやみやたらと近寄れるわけがありません。僕も他の観光客と同じく、写真を数枚取ってホワイトハウスを後にしました。

かつて国王や封建領主が住む城は、高い城壁で囲まれていて外からは見られない構造になっていたことを考えると、ホワイトハウスがほんの少しでも一般人が見られるようになっているのは、ある意味開かれた文明社会を示す意図もあるのかもしれません。ちょっと前までは人数限定で見学ツアーも行われていたようですし(現在はテロへの警戒のため中止)。とはいえ、セキュリティに万全の配慮がなされていることは言うまでもなく、正面の様子だけ一般公開されていると言ってそこがテロリストにとってのウェルカムゲートになるはずはありません。どんな警備体制が敷かれているかは知りませんが、柵を乗り越えて敷地内に入ろうとした瞬間に丸焦げになっているのではないでしょうか(想像)。その点、日本の首相官邸も同じだと思いますが(思いたい)、現在の安倍政権になる前は大変な事態になっていたといいます。飯島勲内閣官房参与によれば、官邸に出入りできる人間が約1300人に膨れ上がっていて、そのうち80人ほどが左翼的なメンバーで前科一犯の人もいたとのこと。また、盗聴マイクや盗聴カメラが仕掛けられていないことを点検しセキュリティシステムを総入れ替えすることを示唆しました。政権が交替したからよかったものの、おそらく民主党政権下に国家機密の多くが邪な意図を持った者たちの手に渡ったことでしょう。国益を大きく毀損したと同時に、あともうちょっとで日本が乗っ取られる危険性もあったかもしれません。もう手遅れになっているとは思いたくないです。

というわけで、国家の中枢にはその国家が威信をかけた厳重なセキュリティが施されているため、いかに世界的な脅威であるテロリストやハッカーでも打ち破ることはあってはならないことです。だから、基本的にホワイトハウスをはじめとする国家中枢がメチャメチャにされ、国家元首が人質に捕られてしまうという状況は映画の中だけの話と考えていいと思います。それほどのセキュリティをかいくぐって侵入し占拠するのですから、敵も相当の手練であるということで鑑賞者の焦燥感を誘うこともできますし、さらに事態を解決できる可能性があるのはたったひとりという無謀なシチュエーションもより一層の緊迫感を創出することができるのです。ただ、これはあくまでも映画の中だけの話です。映画を観に行く僕らはお金を払っている以上、それに見合った満足を得られるのならストーリーをどんどん面白くしてもらって一向に構わないわけだし、所詮映画の中の話なので国家中枢がジャックされようが破壊されようが最後にスカッとすればそれでいいのです。

では、本当の国家中枢侵略とは、映画のようにわかりやすくテロリストが派手に軍用ヘリで一斉射撃したり、白兵戦で手に汗握る格闘を繰り広げたり、核ミサイルの発射装置の解除を発射数秒前まで奮闘するものでしょうか。そんなことはありません。それはもう前時代的なものとなっていると思います。現実は、じわりじわりと侵食していって、僕らが気づかないうちに占拠が完了しているものです。だから、いつの間にか国がおかしくなっていると気づいた頃にはもう手遅れで、国家としての体裁がぼろぼろと崩れ落ちていく一方、一般人はパニックに陥り敵対勢力の思うままに扇動されてしまう。こうなりかけたのが、2012年末までの日本だったと思います。自民党が政権を取り戻し、国家崩壊の一歩手前で踏みとどまった格好ですが、こうした国家ジャックは、日本だけでなくアメリカやEUでも現在進行形で企てられているはずです。映画を観て面白いと思うのはとても得なことだとはわかっていますが、そう感じる一方で、映画の題材はつねにリアルな世界から取り入れられていることを思い返すくせを少しでも付けておかないと、いつの間にか国家ジャック犯に加担していたということになりかねません。ホワイトハウスや日本の首相官邸は、実際に目で見て写真を撮れたらそれでよしとしておきましょう。


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