バグダッド・カフェ

行きつけのカフェを見つけることは人生における命題のようなものになっています。行きつけと言っても、ただ単に仕事の休憩時間とか帰宅する道すがらの短い時間にコーヒー1杯ひっかけるためだけの、暇つぶし、時間つぶし的に利用できる都合のいいカフェのことではありません。あうんの呼吸で意思疎通できる顔なじみの店主、利用客と一緒にゆったりとした時間を共有し、時折聞こえるカップとコースターが触れ合う乾いた音に心地よさ...[続きを読む]

フライト

この映画について、単なる航空機墜落パニックものではないことは知っていました。一歩間違えれば乗客乗員全員死亡という大惨事になりかねなかった状況の中で、英雄的な判断と操縦で被害を最小限に抑えたウィトカー機長をめぐって展開される、法廷での激しいやり取りがメインに描かれるのだろうと思っていました。しかし、この映画の主題はそのどちらでもなく、アルコール中毒と薬物依存に苛まれているウィトカーの内面をえぐり出す...[続きを読む]

ゴーストシップ

この映画を観て、バミューダ・トライアングルのことを思い出しました。バミューダ・トライアングルとは、フロリダ半島の先端、プエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形のことで、その海域を船や飛行機が航行するとまるで神隠しに遭ったかのように姿を消してしまうというミステリーは超常現象に関心がない方でも聞いたことのある話だと思います。有名な実例として挙げられるのが、1945年のアメリカ海軍アヴェンジャー雷撃機...[続きを読む]

裏切りのサーカス

この映画が日本で封切られた時、チケットの半券を提示すれば2回目は1000円で観られるというキャンペーンが展開されていたようです。本国のイギリスで大ヒットしたという実績を引っさげての公開なので、配給会社もさぞや自信を持っていたことでしょう。では、本当に面白い映画なら、別にそういったリピーター割引など企画せずともリピーターが続出するはずなのですが、このケースのようにわざわざ「二度目、真実が見える」とい...[続きを読む]

バッファロー’66

限りなく男性の視点で描かれた映画だと感じました。男性目線というより、男性の願望をそのまま映像化した作品と言っていいと思います。その願望とはつまり「ガールハント」です。気に入った女の子にイチかバチかのアタックをしてダンスパーティーに誘うというのが、アメリカ映画でよく描かれる青年男子のガールハントの典型例で、これはこれで健全だと言っていいでしょう。プロム(卒業パーティー)に出席するのに相手の女の子を見...[続きを読む]

イエスマン “YES”は人生のパスワード

山本七平の著書に『空気の研究』というのがあります。目に見えないもの、つまり「空気」としか言いようのないものが日本の社会や人々を支配していることを指摘した名著で、お読みになった方も多いと思います。これを突き詰めて考えてしまうとややこしいのですが、原理としては特に難しいものではなく、よく僕らが無意識のうちに「なんとなく」とか「なりゆきで」と口走ってしまう、行動上の甘えのようなもの。「みんながやっている...[続きを読む]

海辺の家

使い続けてきた車を新しいものに替える、トレードマークだったメガネを替える、住み慣れた家を壊して新しく建て直す。こうした行動の裏にある意図というのは、心理学を駆使した分析を試みることはせずとも、容易に読み解くことができます。その想定しうる意図とは「これまでの自分自身から脱皮して新しい自分になりたい」ということ。専門家の診断を仰ぐまでもなく、ほぼ正解だと思います。以前までの自分を毛嫌いしていて心機一転...[続きを読む]

グラン・トリノ

アメリカに行って気づくことがあります。特に大都市で顕著なのですが、市内のファストフード店やカフェ、空港の売店などの販売員がかなりの確率でヒスパニック系や黒人だということです。初めてアメリカに行った時、本場のマクドナルドで食事するのをとても楽しみにしていて、映画俳優のような白人店員が「Hi!」と白い歯を見せてスマイルしてくれるのかと思っていましたが、カウンターで僕を待っていたのはスペイン語訛りの強い...[続きを読む]

三国志英傑伝 関羽

日本人の三国志好きはもう語るまでもないでしょう。漫画やゲームでは三国志を扱ったタイトルが山ほどあるし、本屋に行けば数多くの関連本を手にすることもできます。また、知り合いの中で必ず3人は三国志ファンがいるはずです。三国志に染まるのは中学か高校くらいの少年期で、その多彩なキャラクターと壮大なストーリーの虜になるという過程は、もはや大人への通過儀礼と言ってもいいかもしれません。かくいう僕もそうした三国志...[続きを読む]

英国王給仕人に乾杯!

小さなレストランの見習い給仕だった主人公が、ちょっとしたきっかけでトントン拍子に出世していって、ついにはプラハの最高級ホテルのレストランの給仕長になるというストーリー。日本人ならこういうサクセスストーリーは好きですよね。農民の子が出世に出世を重ねて天下を統一した豊臣秀吉に代表されるように、たとえ生まれや身なりは卑しくとも才覚ひとつでのし上がり、たゆまぬ努力と献身が実って社会で大成功を収めた人の話と...[続きを読む]