カリフォルニア・ダウン

(2015年 / アメリカ)

ネバダ州に巨大地震が発生、レイは全力で救助活動を行うなか、妻と娘のいるカリフォルニア州に激震が襲う。倒壊寸前の高層ビルの屋上から間一髪で妻を救ったレイは、娘を助け出すためにサンフランシスコへ向かう。

助けたいのは国か家族か

カリフォルニアダウン

3.11の東日本大震災、大混乱に至った被災地の中で、住民たちが暴動や略奪ひとつ起こさず救助を待ったり、整然と列に並んで食事の配給を受けたりする姿が世界中で賞賛されたという話をメディアを通して報じられました。たしかに、その通りだったでしょう。強い忍耐のもと秩序を乱すことを嫌う日本人は、緊急時においても、他人を押しのけて我先にと退路を確保したり物を奪ったりすることをしないということは、同じく日本人である僕自身よく理解できます。とは言え、本当に「暴動や略奪ひとつ起こさ」なかったわけではないでしょう。窃盗、空き巣、強姦、偽ボランティアなど、被災に便乗した日本人による犯罪が数多く報告されているのですから、外国人が褒め称えるような日本人像は神話であったと、今回の災害で逆に浮き彫りになったと言えるのではないでしょうか。

ただ、そんな中でも、日本人が平時以上に冷静に行動し「助け合いの精神」でこの苦境を乗り越えようとしたことも事実。2005年のハリケーン・カトリーナによって大災害を被ったニューオーリンズでは、略奪が横行し被災地は内乱状態に陥っていたと聞きます。市内の無人となった商店や住宅から、家財や電化製品などを両手に抱えて盗んでいく様子が映像で捉えられるほどで、略奪した物を守るために傷害や殺人事件が多発していたともいいます。価値観の異なる多種多様な人種が暮らすアメリカの町では「助け合いの精神」は希薄だったと言わざるを得ません。なにせ、国民がひとつにまとまるには、共通の敵(イラクやアルカイダ)を作るなど強烈な大義名分が必要となる国ですから。

「助け合いの精神」とは、日本特有の譲り合いの精神が基になっていることはたしかですが、やはり個々人が自らの身を顧みず行動を起こすことが原点になっていると思います。留学生を高台に避難させ自らは犠牲になった水産会社の社長、津波が押し寄せる中でも緊急避難放送を続け海水に飲み込まれた役所の女性など、エピソードは枚挙に暇がありません。こうした話は美談でも何でもなく、僕のように被災しなかった日本人でも、日本列島という災害大国に住んでいる限り、いつかは発揮すべき精神でもあります(そう信じたい)。日本人が日本を守らなくてどうする。そんな中で、「日本を守る」という信念をもっとも強く持っており、実際その任務に当たっているのが自衛隊です。未曾有の大震災となった東日本大震災では、10万人以上の自衛官が被災地で決死の救助活動を行ったのです。

氷点下の気温の中、暖を取る間もなく、持っている携帯食料は迷うことなく被災者に配り、瓦礫の山と化した街では生存者の捜索に邁進する。現場は、遺体がそこらかしこに散らばり、死臭や腐敗臭が充満する、文字通りの地獄だったといいます。家族を亡くし、家族の安否が不明のままの自衛官がいれば、妻や子どもを残して出動してきた自衛官もいました。陸上自衛隊の幕僚長も家族と連絡の取れないまま任務に就きましたが、部下には笑顔を見せながら指揮を執っていたそうです。時折余震で揺れるものの甚大な被害はなかった東京で、暖房を付けながらテレビ越しにその様子を見ていた僕が、地元の方々や自衛官たちに労いの言葉をかけるほど白々しいことはありませんが、助かってほしい、助けてほしい、という気持ちは一緒だったと思います。やはり同じ日本人、助け合わなければと強く心に念じた出来事でもありました。

この映画は、エンターテイメントと割りきって観ればそれなりに面白いです。でも、3.11を共有した日本人なら、必ず引っかかるものを感じるはずです。それはきっと、不快で厭わしく苛立たせるものに違いありません。DVDのパッケージに、「この映画には地震と津波が出てきます」的な注意書きがされていますが、問題はそこではありません。家族や友人といった私的なつながりが何より強いアメリカ社会なら、公務を放り投げてでも家族を救い出すことに共感できるのかもしれません。主人公が最後に言い放った「また作り直そう」というセリフも、社会ではなく、よりを戻した元妻と新しい恋人を得た娘とのミクロな関係としてしか聞こえず、思わず苦笑してしまったものです。でもまぁ、こうした作品でもそこそこヒットしてしまう日本という社会も、懐が深いというか何というか。ちなみに、僕は始終イライラしながら観てました。こんな作品、滅多にないです。


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