SHAME -シェイム-

(2011年 / イギリス)

N.Y.に暮らす独身男・ブランドンは、仕事以外の時間すべてを性欲処理に注ぎ込んでいた。性欲を介してしか人と繋がることができない彼の下に、激情的な性格の妹・シシーが転がり込んで来る。

依存症だけを異常視するには早すぎる

shame

アルコール、ニコチン、ギャンブル、薬物などに対し、身を持ち崩すまで惑溺してしまう現象のことを「依存症」と呼びます。最初はストレス解消といった軽い動機で始めたことが、いつしかそれがないと落ち着かなくなり、やめると苛立ちや不安、絶望感が訪れたり、辛い禁断症状が現れる場合もあります。このように、対象に支配され、自分の意志で欲求をコントロールできなくなるのが依存症です。依存症は、物質に対する依存症(アルコール、タバコ、薬物など)、行為に対する依存症(買い物、ギャンブル、ゲームなど)、人間関係に対する依存症(恋愛、親子、友人など)の3つのタイプに分類され、最も注意が必要なのが物質に対する依存症だと言われています。特定の物質を摂取しすぎると、身体にこれらの物質に対する耐性ができ「身体依存」の状態になってしまい、前述した禁断症状が発生するようになるからです。アルコールやタバコは、依存症の代名詞的な物質と言えるでしょう。ちなみに、僕は軽いカフェイン依存症です。

依存症の原因ですが、個人的な精神依存から段階を経てなっていくものなので、万人に共通する原因はないようです。ただひとつ言えることは、ストレスが大きく関係しているとのこと。人間の脳にはドーパミンという快楽物質があり、少し身体を動かすなど行動意欲すべてにドーパミンが伴います。依存している物事を行うときに、過剰にドーパミンが分泌され、快楽気分が脳に記憶されてしまいます。ストレスなどで脳内のバランスが崩れている場合、ドーパミンを分泌量以上に出ていると勘違いしてしまうのです。ストレスを感じた時にお酒を飲むと楽しくなった、パチンコをして嫌なことを忘れられたといった些細な快楽が繰り返されると、それがないと不安で仕方のない状態にまでなってしまう。ストレスから逃げようとして、楽しいこと嬉しいことを追い求めてしまい、精神的にも肉体的にもはまりこんでしまった結果、依存症に陥ってしまうのです。

さて、この映画の主題であるセックス依存症。どんな症状か特に調べるまでもなく、絶えず性行をしていないと不安になってしまう症状のことだということは容易に察せられます。ただ、その対象は性行だけでなく、自慰行為やポルノ、露出、覗き行為にまで及ぶとのことで、一般的な性的関心を逸脱した過度な行為に身を染めてしまう症状と言うことができそうです。異性に関心を持ったり性欲をかき立てたりすることは、人間として健全な感情であることは確かなのですが、異常な性欲保持者は性犯罪者(サイコパス的なイメージ)を想起させるため、他の依存症とは一線を画される印象があります。つまり、この映画に限っていうと、主人公のブランドンがコールガールを呼んだりシャワールームで自慰行為をしたり、野外セックスをしたりするシーンになると、彼がとんでもない犯罪を犯すのではないかと観ている側は恐怖に駆られる。女性と普通に食事をしているだけで不安になり、パソコンに保存したポルノ画像を上司に貶されると背筋が凍る。セックスという、ごく一般的に人間としての健全な愛情行為が、ドス黒い狂気に見えてしまうのです。

健全なセックスはもちろん、健全なアルコール摂取、健全なギャンブル、健全なショッピングなんていう表現が正しいのか(そもそも存在するのか)なんてわかりません。ですが、人間はある程度人や物に頼りながら生きていくものです。100%自立精神を旨とし、何にも寄りかからず生活していくことなんてできないし、やってみたとしてもどこかで自滅するでしょう。要は、バランスです。少しくらいお酒を飲みすぎたって、デパートで散財してしまったって、風俗店で若い女の子を買ったって、それが普段通りではないという認識があれば問題ないと思います。限度を超えてしまい、なおかつ限度を超えたということを認識を持てないでいると問題なのであり、病理学的に依存症となっても異常を異常だと感知できなくなるのです。

ブランドンがセックスに惑溺した背景には、日常生活や仕事からくるストレスがあったことは確かでしょう。でも、彼は高級マンションに住み、仕事でも成功してて、高そうなレストランで食事できるような人です。人生の勝ち組と言ってもよく、彼が感じるストレスは、貧困や社会的地位の低さからくるものではなさそうです。正直、僕はこの映画から共感は得られませんでしたけど、毎日当たり前のようにインスタントコーヒーを淹れ、自販機でコーヒーを買い、ファストフード店でコーヒーを注文する、この無意識の反復が、ブランドンの苦しみの源泉なのではと考えるにつけ、少し恐怖を覚えたことは事実です。


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