グランド・ブダペスト・ホテル

(2014年 / ドイツ・イギリス)

美しい山々を背に優雅に佇む、ヨーロッパ最高峰と謳われたグランド・ブダペスト・ホテル。その宿泊客のお目当ては”伝説のコンシェルジュ”グスタブ・Hだ。ある日、彼の長年のお得意様、マダムDが殺される事件が発生し、遺言で高価な絵画がグスタブに贈られたことから容疑者として追われることに。

そこにずっとあってほしい海外での記憶

グランド・ブダペスト・ホテル

海外旅行などで現地滞在中のホテル探しをするとき、決め手となるのが「星の数」だと思います。いわゆる「3つ星」とか「5つ星」とかの格付けのことですが、これは特に国際的な統一規格があるわけではなく、国や民間の格付け機関が独自に定めた基準に従って格付けをしているとのことです。なので、格付けには、その国ならではの文化や価値観などが色濃く反映されているため、たとえそのホテルがA国では5つ星に値するクオリティを誇っていたとしても、別の国の基準では3つ星にしかならないといったケースが少なからずあり得ます。また、格付けの一般的は、基本的にハード面(施設や設備の有無など)が基準となり、ソフト(サービス)面は含まれていないとのこと。これはちょっと意外でした。それでは、初めて訪れる国でどのホテルに泊まれば満足できるのかは星の数だけでは判断できないことになります。確実なのは、4つ星以上であれば無難といったところでしょうか。

それでも、どの国においてもおおまかな傾向というものはあります。5つ星は、最高水準の客室とサービスを提供する高級ホテル。リッツカールトン、フォーシーズンズなど。4つ星は、ほとんどが大型のフォーマルなホテル。ハイアット、マリオットなど。3つ星は、広々とした造りの比較的大きいホテル。ホリデイイン、ヒルトンなど。あと2つ星と1つ星は、個人経営の小規模ホテルや独立系およびブランド名のあるホテルチェーンで、客室の設備は最低限のものに抑えられている。といった感じですが、フランスならばフランス政府観光局、英国ならば英国政府観光庁、スコットランド観光局、ウェールズ観光局、オートモービル・アソシエーション、ロイヤル・オートモービル・クラブの5団体、中国ならば中国国家旅遊局と、詳細はそれぞれの国ごとの基準に従うことは前述したとおり。ちなみに、日本には公的な格付機関は存在しないため、「ミシュランガイド」を参考にする人が多いそうです。

このように、ホテルの格付け(星の数)がいまいちアテにならない中、快適でオシャレなホテルに泊まりたいとなれば世界的に名の知れたホテルを選ぶのが一般的でしょうか(予算に余裕のある方限定で)。ちなみに、僕が海外旅行をする際は、出発前に旅行代理店を通して予約することは一切せず、現地に行ってから飛び込みで探すことがほとんどです。物価の高い国や夜に到着する場合はネットで調べて手頃なゲストハウスを予約するケースもありますが、ネットに出稿しているホテルというのは安いと言っても僕の基準を超えた値段のところがほとんどなのでそもそもネット予約はしません。アジア圏に行くことが多いのですが、街をうろついていればホテルの客引きが寄ってくるので、その人と交渉すればそれなりのところに(しかも安い!)ところを紹介してくれます。もちろん、その人が悪人かどうかを見極める目は必要になりますが。なので、僕は、海外では、3つ星か5つ星か以前に、星すら付いていないホテルにしか泊まりません(日本でも同じです)。

この映画は、もともとエグゼクティブ御用達で“超高級”の名をほしいままにしてものの、おちぶれ数人の顧客しか獲得できなくなった「グランド・ブダペスト・ホテル」をめぐる話です。ストーリーとしては、ホテルのコンシェルジュであるグスタヴ・Hが、懇意にされていた大富豪の老女の殺人容疑をかけられ、刑務所を脱走したのち、ロビーボーイのゼロとともに真犯人を捜すというもの。その展開のなかで、ピンクを基調にしたメルヘンチックな描写、人物間のコミカルなやり取りといったお伽話的な演出が注目されます。そういった視覚的な面からでも十分楽しめるのですが、かつて栄華を誇ったホテルが、グスタヴ・Hが支配人となりゼロが受け継いだ後おちぶれてしまったという虚無感がいちばん印象に残っています。

かつて5つ星だったホテルが、4つ星、いやそれ以上にまで格下げされてもおかしくないほどの廃退。絶頂期を知る者にとっては、もう昔話のネタにしかならなくなってしまったという何とも言えないやるせなさが募るのでしょうが、それでも経営を放棄し取り壊されることはなく残っているというのは、それこそ絶頂期を知る者にとっての心の拠り所となっているのでしょう。僕は久しぶりに訪れた外国の街で、以前泊まったことがあるホテルを見に行くことがよくあるのですが、残っているところもあれば、別のホテルに変わっていたり、更地になっていて別の建物が建設中だったというケースに遭遇します。残っていたらその当時の記憶が鮮明に蘇ってくるのですが、もうなくなっていると当時の記憶の容量分の隙間が心に空いてしまったような寂しさを感じます。いろいろな事情で仕方なかったとしても、外国に行って泊まるホテルには格別な思い出が残るもの。特別な思い出を思い起こさせてくれる場所というのは、いつまで残っていてほしいものです。


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