ホビット 決戦のゆくえ

(2014年 / アメリカ・イギリス・ニュージーランド)

ホビット族のビルボは竜に奪われたドワーフの国と財宝を取り戻すべく冒険の旅に出た。旅の仲間は13人のドワーフと、魔法使いのガンダルフ。やがて、森のエルフたちも加勢して、いよいよ竜と対峙する。大地を二分する壮絶な戦いの火ぶたが切って落とされる!

ファンタジー世界の住人だって生きている

僕が小学生、中学生の頃は、人間以外の種族が住む異世界を描いたファンタジー小説やゲームによく親しんでいました。小説でいちばん好きだったのが「ロードス島戦記」。これは当時のファンタジー小説の代名詞的存在で、この作品がきっかけでファンタジーにどっぷりとハマった人も多いんじゃないかと思います。ゲームでは、友だちの家でやっていたテーブルトークRPGの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」で、詳細は忘れてしまいましたが、とにかくファンタジー特有の想像力あふれる世界観に夢中になった記憶があります。それに、アニメでも、突然異世界にワープして人間以外の種族がたくさん住んでいる環境で仲間と助け合いながら悪の親玉を倒すという、王道のRPG的ストーリーのものが各クールごと必ずひとつは放送されていたものです。僕もそういうアニメにハマっていたクチですが。

こうしたファンタジー作品に登場する種族とはもちろん固定されているわけではなく、創作されるごとに増えていくわけですが、そのほとんどはJ・R・R・トールキンの「指輪物語」に影響されているとのことです。指輪物語自体も北欧神話や民間伝承を基にしているため完全なオリジナルとはいえないのですが、それでも現在に至るまでのファンタジー作品のバイブルとして君臨していることは事実です。エルフやドワーフ、ノーム、ホビット(ハーフリング)、ゴブリン、オークなど、たとえファンタジーファンでなくとも耳にしたことがあり、それがどういうものか朧気ながらもイメージが浮かぶんじゃないかと思います。最近は、「ロード・オブ・ザ・リング」の大ヒットにより、似たようなファンタジー映画が数多く製作されるようになったため、こういったファンタジー用語に接する機会も増えてきたことも影響しているはずです。

ところで、これらファンタジー種族の中でどれがいちばん強いのか、あるいは優れているのか、という議論ですが、それはゲームにおける進行上、バランスを取るために付けられた優劣のイメージが強いため無用に思います。ファンタジーという想像上の世界の話ではありますが、どの種族も平等のはずです。美しく若々しい外見を持ち不老不死のエルフ、地下や洞窟に住み身長1メートルほどでモジャモジャの髪の毛と髭が特徴的なドワーフ、身長1メートル弱ぐらいで手先が器用ですばしっこいホビット、イタズラ好きで外見が醜いゴブリン、地下世界に住む邪悪なオークなど、それぞれの生活空間を侵されない以上、争い事をせず調和を保ちながら暮らしているはず。ドラゴンのような反則的な強さを持った種族でさえも、縄張りを侵害しない限り牙を剥いてくることはない神聖な存在として描かれることが多いです。また、それぞれの種族には得手不得手があり、種族間で作れないものを他の種族と交易して手に入れるなど、人間世界と変わらない他民族間の交流があってもおかしくないのです。

この映画の世界も、平時はきっとそうした均衡が保たれている世界であり、決して弱肉強食の修羅地獄ではないはずです。人間世界という同じ種族間での争い事が絶えない世界に比べると、ずっと平和で、森や海の生物に見られるような自然淘汰の掟がまかり通っている、ほんとうの意味での自然な世界なんじゃないかと思います。この作品は当然のことながら商業作品なので、そうしたファンタジー世界の平和な日常を延々と描いていられないという事情があるわけですが、ファンタジー世界の種族がおしなべて好戦的だと誤解されてしまうのは彼らにとってはやるせないことこの上ないとも思います。ま、でも、こうした深読みすら寛容に受け入れてくれるのがファンタジー世界です。映画を鑑賞した後にあれこれ思いを巡らすのも、事後の展開を空想するのも自由。この類の映画がヒットするたびに、人間て本当に空想好きなんだなとの認識を新たにするのです。


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