ダンテズ・ピーク
(1997年 / アメリカ)地震調査のため、休火山ダンテズ・ピークのふもとの町を訪れた地質学者ハリーは、山の異変に気づき、火山噴火を確信する。女性市長レイチェルが集会を開き、事情を説明しようとした矢先に大地震をともなう噴火が起こり、火山灰と溶岩が避難する人々を襲う!
立ち向かうことが勇気とは限らない
僕がかなり小さかった頃のことですが、ドーンドーンという破裂音とともに、空気が振動するという現象が発生したことがありました。始めは、弟が2階でふざけて飛び跳ねているのかと思いましたが、それにしては音は遠いところから聞こえてくるし、何より空気が震えていることの説明がつきません。テレビを付けてみたら、理由はすぐに分かりました。大島の三原山が噴火したとのことでした。僕の実家は房総半島にあるのですが、物質的な影響はなかったものの、火山噴火の余波を直に感じるなんて思ってもおらず、子供ながらに恐怖したことを覚えています。それまで台風や中規模の地震以外、自然災害に出くわしたことのなかったこともあり、火山の噴火はテレビの中だけの出来事ではないという現実を思い知ったわけです(大島が東京都だったということを知ったのもこの時が初めて)。
火山の噴火には規則性があるとのことで、小さい噴火はしょっちゅう起こりますが、阿蘇山のカルデラをつくるような巨大噴火は1万年に1回起こるくらいなんだそうです。また、地震と同様、火山噴火にも規模を示す指数(VEI)が設定されており、0~8までスケールがある中、指数4クラスは大噴火、5や6のクラスを巨大噴火と呼んでいます。日本の場合、5は1000年に数回、4は30年に1回起きてもおかしくないとされていますが、5は1730年ぐらい(樽前山の噴火)を境にここ300年ぐらいないとのこと。2014年9月に噴火し、58人が犠牲となった御嶽山噴火の指数は、「1」というから驚きです。指数の数字が1つ増えると噴火のエネルギーは10倍違うとのことで、巨大噴火が起きたらどれほどの影響が出るのか、想像するだけでもゾッとします。
噴火予知の技術はまだ不完全、また地震との関連性も証明されたわけではないのですが、人間が感じることのできない地震が山の中で起きたり、山体が膨張したり地殻変動が起きるという予兆は観測できるとのこと。また、噴火にも種類があり、噴石や火山弾と呼ばれる岩石が放出される、マグマのしぶきが空高く泉のように噴き上がる、火口から大量の火山灰と軽石が噴出し上空へ勢いよく立ち上るなどで、同じ山でも過去と違うパターンの噴火をすることがあるそうです。これにより、火山が噴火した、あるいは噴火が確実という状況になったら、まずは避難することが先決ですが、噴火したら火口付近ではどのような被害が起こり得るか知っておくことも大切です。溶岩流、土石流、火砕流、岩屑なだれ、噴石、火山弾、火山性地震など、パニックにならず冷静に情報を見極めてその場での対応していく必要があります。
この映画では、火山噴火と聞いたら誰もがイメージする火山像をエンターテイメントとして象徴的に見せている作品だと思います。地を割るような巨大な炸裂音とともに火口から噴煙がもくもくと立ち昇り、火山灰が街を灰一色に染め、ドロドロの溶岩があたり一面を焼け野原にする。映画ではこれらをテーマパークのアトラクションのように、ひょいひょい避けながら生存者を救出し、脱出するという展開ですが、当然のことながら実際そうはいかないでしょう。自然災害とは人知を超えたパワーが人間を襲うものなので、田んぼの様子を見に行く体で迂闊に外に出ると必ず巻き込まれ命を落とすことになります。作品としては非常にエキサイティングで引きこまれたのですが、人間は火山噴火、つまり自然を克服できるなんて早とちりする人が出ないことを祈るばかりです。