作成者別アーカイブ: 牧村蓋世

ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~

「実家のような安心感」という言葉によく接します。主にネットの書き込みからですが、都会での一人暮らしや会社の人間関係、微妙な恋人関係などから解放され、晴れて後腐れなく変な気遣いをすることなく、リラックスして過ごすことのできる状態のことです。ネットでは、人気の動画を指していうことが多いようですが、リアルな環境においては、本当の実家ではないけれども、生まれ育った、よく見慣れた、心開ける人間関係が存在する...[続きを読む]

ムーラン・ルージュ

僕自身のことを音楽で表現するとしたらどういうものになるんだろうと、ふと思いました。で、思いついたと同時に首を傾げました。音楽にするにしても、僕自身のどの部分、どの時間をメロディーに乗せるのだろうかと。喜びや悲しみ、苛立ち、怒りなどの一時的な感情をいちいち拾い上げていたらきりがないですし、僕の外見、ファッション、言動に着目してみるにしても主観的なものになってしまうだろうし、これまで辿ってきた人生にし...[続きを読む]

ゼロ・ダーク・サーティ

この映画は、9.11同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンの居場所を突き止め、やがて暗殺へと至る道筋を開いた、CIA分析官の活躍を描いたサスペンス。ビンラディン暗殺(2011年5月2日)のニュースは日本でも親の仇を取ったかのように大々的に報じられたため、悪の首魁ついに討たれるというニュアンスで記憶に残っている方も多いと思います。僕も9.11の衝撃と同じくらいのインパクトを感じたのですが、...[続きを読む]

この世界の片隅に

まず率直に言いますが、この映画を観終わった直後に感じたのは、ちょっとした違和感でした。具体的にどのような違和感だったのかというと、観る前にイメージしていた内容と異なっていたというより、こうした作風にすべきではなかったのではと批判する気持ちに近いです。「戦争」という人間同士の殺し合いを合法化した政治ゲームにおいては、こじつけの正義がまかり通り、とばっちりを受けた相手方が悪のアイコンにされ完膚なきまで...[続きを読む]

ドリームガールズ

ボーカルの入った音楽は、ポップスを中心に割とよく聴くほうですが、その歌手あるいはグループの「ボーカル」だけを意識的に聴くということはあまりないです。もちろん、曲に込められた意図を言葉で伝えようとしているのがボーカルなので、ボーカルこそ彼らが伝えたいことを受け取るためのダイレクトな媒体だとは思います。ですが、これは僕自身の好みの問題だとは思うのですが、バックミュージシャン含めたバンドのメンバーすべて...[続きを読む]

100歳の華麗なる冒険

もし100歳まで寿命があるとしたら、いったい僕はどんな100歳を迎えているのでしょうか。おそらく、というか、確実に衰えていて歩行や食事すらままならず、さらには重度の介護認定されていることも考えられます。一人暮らしなんか絶対にできるはずがなく、周りの人の助けを借りて、そして周りの人の時間を奪いながら生きているということになっているんじゃないかって思います。100年生きるということは大変なことです。最...[続きを読む]

ミッドナイト・イン・パリ

パリには一度だけ行ったことがあります。当時、2か月の予定でヨーロッパ各地をバックパック背負って周遊するという計画を立てたなかで、どの街よりいちばん長く旅程を取ったのがパリでした。理由として、事前に調べてリストアップした各都市における観光名所の数が最も多かったということもありますが、やはり「パリ」という街に対する憧れにも似たイメージが強烈過ぎて、たとえ見どころが多くなくとも長く滞在すべきという意識が...[続きを読む]

フランシスコの2人の息子

僕は趣味で楽器を弾くのですが、あくまでも個人的な趣味であって、誰かに聞かせたり誰かと一緒に演奏したりすることはしません。また、音楽を聴くときも、家の中でステレオから流して聴くとか、通勤時や公園のベンチに座ってスマホからイヤホンを通して聴いたりする感じで、他の人と一緒に盛り上がりながら聴くということはしません。別に、音楽好きを隠しているわけではなく、他の人の演奏に嫌悪感を催すからというわけでもなく、...[続きを読む]

フランス組曲

1940年6月、フランスはドイツ軍によってパリを占領され降伏。ドイツのポーランド侵攻でドイツに宣戦布告した後はしばらく戦火を交えることはありませんでしたが、突如として起きたドイツのオランダ・ベルギー侵攻後、わずか1ヶ月後にパリが陥落し、フランス第三共和政は崩壊しました。6月22日に休戦協定が締結、7月10日には自由地区のヴィシーに親ドイツのフランス政府が成立。形式的にはフランスにヴィシー政府の主権...[続きを読む]

おやすみなさいを言いたくて

戦場カメラマン。特に戦闘や紛争の行われている地域にて戦争や戦闘員、戦争による被害、被害者などを取材するカメラマンのことで、彼らの作品はメディアを通じて目にする機会が多いと思います。中でも、ベトナム戦争で、戦火から逃れるベトナム人母子をとらえた「安全への逃避」は誰もが一度は見たことあると思いますし、僕自身も初めて見たときは強烈なインパクトを受けたことを覚えています。ピュリッツァー賞など国際的な写真コ...[続きを読む]