マリー・アントワネットに別れをつげて

(2012年 / フランス、スペイン)

1789年7月14日、いつもと変わらぬ優雅な朝を迎えたはずのヴェルサイユが1枚の紙に震える。朗読係のシドニーは心酔する王妃マリー・アントワネットへの忠誠を誓うが、王妃から思いもよらなぬ頼みを命ぜられる。

フランス革命劇に期待すること

マリー・アントワネットに別れをつげて

この映画の主人公シドニー・ラボルドは、フランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネット(以下、マリー)付き朗読係としてヴェルサイユ宮殿に給仕していた実在の人物。ただ、映画では実際の彼女とはかけ離れた創作として描かれているので、彼女の人生を追うことはやめておきます(と言うか、検索して詳細が出てこない)。ですが、ほかに興味深い事実を見つけたので、そちらを追ってみたいと思います。それは、マリー・アントワネットとその取り巻きであるポリニャック公爵夫人との関係です。まずマリー・アントワネット。彼女は有名ですね。のちのフランス王ルイ16世の政略結婚の相手としてウィーンから嫁いできたマリーは、ろくな夫婦生活もないままヴェルサイユ宮殿で暮らし続けます。宮殿で自由気ままな振る舞いをするマリーに対し、反発も多く「首飾り事件」で批判はますます高まっていきました。そんな中、王政に対する民衆の不満が爆発し、フランス革命が勃発。国王一家はフランス脱出を図りますが、国境近くのヴァレンヌで発見され拘束。革命裁判で死刑判決を受け、1793年10月16日、コンコルド広場にてギロチンに処されました。

一方のポリニャック公爵夫人ヨランド・ド・ポラストロン。その前に、この人には、マリーをめぐるうえで対照的な女性がいます。ランバル公妃マリー・テレーズです(以下、ランバル夫人)です。ランバル夫人は、マリーの信頼を得て宮殿の生活をしきる宮中女官長に任命されると、給仕した15年ほどで15万リーブルもの下賜金(約10億円)を与えられ、マリー御用達の店で金に糸目をつけずにドレスを買いあさっていたと言われています。こうした浪費があったとはいえ、マリーに対しては大変献身的だったそうです。さて、ポリニャック夫人のほうですが、貧乏貴族ではあったものの夫ともどもマリーに取り入り、ランバル夫人から寵愛を奪うことに成功。ランバル夫人の3倍以上もの下賜金を与えられ、ランバル夫人以上の待遇を得ました。このふたりの人間性があらわになったのがフランス革命。ランバル夫人は、国王一家の援助を求め英国に渡ったり国王一家が囚われの身となったときにはマリーに付き添いましたが、民衆たちに惨殺されてしまいました。ポリニャック夫人はというと、あれだけマリーの寵愛を受けていながら、マリーを見捨ててオーストリアに亡命してしまったのです。このふたり、奇しくも生年月日が一緒だったそうです。

おそらく、この3人を史実通りに、もちろん脚色も加えてですけど、描いたほうが面白かったんじゃないかという気がしています。原作が文学作品なので、マリーの女官から見たヴェルサイユ宮殿の人間模様という切り口はまっとうなのでしょうけど、映画としてパンチに欠けていたという気がしてなりません(僕の好みの問題ですが)。フランス革命そのものではなく、フランス革命勃発時のヴェルサイユ宮殿内部を描いているので、銃弾が飛び交ったり馬のいななきが聞こえてきたりだとかの派手なシーンはありません。ただ、ひとりの女官が冷徹な目で、マリーを中心に、宮殿に住んでいる貴族が慌てる様を映し出す場面が続くので、いまいち緊迫感が伝わってこない。キーパーソンであるはずのポリニャック夫人も存在感がない。だったら、前述したように、マリー、ランバル夫人、ポリニャック夫人による女同士のドロドロの闘いを見たかった。この際、3人による昼ドラ的愛憎劇で。主役はランバル夫人ですね(この映画に出てきましたっけ?)。判官贔屓の日本人にはたいそう受けることでしょう。こう書いてしまうと、いかに僕が文学的素養に欠けているかがバレてしまいますね。やっぱりハリウッド映画脳ということでしょうか……。


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