ホステル
(2005年 / アメリカ)刺激を求め、ヨーロッパを旅する大学生のジョッシュとパクストン。途中、旅先で意気投合したオリーも加わり、各地の快楽街に入り浸っていた。そんなとき、男達が求める快楽がすべて手に入るという町の噂を聞きつけ、3人は東欧の田舎町へと向かう。
過剰なホスピタリティにご用心
海外を数ヶ月単位で旅するバックパッカー御用達の宿と言えば、ゲストハウス。いわゆる安宿というやつで、外国人が集まる観光地には必ずいくつか存在し、バックパックを背負った長期旅行者の溜まり場となっているところでもあります。中に入ると、たいていバーが併設されたレセプションがあり、ロビーではさまざまな国籍の旅行者がビールを片手に交流を深めている様子がうかがえます。で、肝心のお部屋のほうと言えば、そのほとんどが、二段ベッドが3~5基設置されたドミトリールーム。室内にテレビや給湯器、バス・トイレなど、シングルにあるような設備が完備されている部屋はほぼ100%ありません。ベッドのほかにあるものは、人数分のロッカーくらい(鍵は各自持参)。ベッドの読書灯、充電用プラグはあったらラッキー。当然ですね。1泊500~2000円ほどなので。受付の際にベッドを指定されるケースもありますが、早い者勝ちがあることが多いので、たいてい下段のベッドから埋まっていきます。ゲストハウスによって値段や清潔さ、ロケーションの良さなどはばらつきが激しく、いい宿はすぐ埋まっていき、飛び込みなどでやむを得なかった場合、非常に後悔することもあります。なので、旅行者間の情報交換が非常に重要になってきます。
国によって物価も異なればインフラの良し悪しも激しいので、寝れる場所さえあればいいという人以外、観光と同じくらい宿選びには神経を使います。観光名所からアクセスが良く、それでいて周りに飲食店が多く便利で治安もいい。そういった立地好条件の宿はたいてい値段が高くなるので、節約派はどこかで妥協しなければいけません。とはいえ、大きな街にはどこも外国人が集まる安宿街があるので、宿を予約していない場合はとりあえずそこに行けばいいでしょう。観光客向けなので英語が通じ、場所によっては日本語が通じることもあります。ロケーションも問題ないです。いちばん有名だと思われるタイのカオサン通りでは、市内中心部からはちょっと離れているものの、飲食店や旅行代理店、ネットカフェなど、必要なものが揃っているのでわざわざ遠出する必要はありません。何か月も住み着いている旅行者もいるくらいですから。僕も数日滞在したことありますが、かなり居心地よく、泊まった宿はたしか1泊100円以下でした(もちろん必要最低限のものしかありませんでしたが)。エアコン付きでも当時500円前後だったと思うので、いま考えてみればかなりの貧乏旅行でしたね。物価が安く便利なので、何ヶ月も住み着いているというものうなずけます。
さて、いままで「ゲストハウス」という言い方をしてきましたが、欧米では「ホステル」という呼び方のほうが一般的のようです。ゲストハウスはアジアを中心に使われているとのことで、ホステルとは、ホテルとホスピタリティを合わせた造語。ユースホステルじゃないけどゲストハウスとは呼ばない安宿と覚えておけばいいでしょう。実は僕もヨーロッパを旅するまで、ホステルという呼称には馴染みがなかったのですが、両者は呼び方が違うだけで同質のものだとわかりました。泊まってしまえば、あとはバックパッカーのノリで十分です。イギリスからフランス、ドイツ、中欧、イタリアなどを周り、各地でホステルを利用。値段は1泊2000~3000円で簡単な朝食がついているところが多く、部屋やベッドは概ね清潔、バス・トイレも許容レベルのところがほとんどでした。最近ではWifiの有無が重要なポイントなのですが、どこも強力で問題なし(ロビーしかつながらないところもありましたが)。このように、宿ではひと通り満足できたのは、リサーチを欠かさなかったからです。僕は次の街にいく前は必ず「Booking.com」というアプリを使い、じっくり時間をかけて探しまくりました。だって、宿の良し悪しが旅の満足度を大きく左右することをこれまでの経験でよく知っているからです。
さて、この映画はタイトル通り「ホステル」が取り上げられた作品。ホステル内で完結するお話ではありませんが、ホステルを利用するバックパッカーの姿が、大げさではありますが描かれていて僕なんかは興味深かったです。ホステルのドミトリールームでは、男女混合であることが多いのですが、映画ほど官能的ではないですが欧米人の女性はかなりオープンですね。室内に男性がいるにも関わらず着替えを始めたり下着を隠しもせず干していたりして、逆にこちらのほうが気を使ってしまうほどです。また、僕は遭遇したことがありませんが、恋人同士でおっぱじめることもあることもあるとか。さすがにこれは周りから顰蹙を買うようです。あと、室内で大麻を吸う人を見かけると、外国に来たなと感じてしまいます。タイやラオスなどの東南アジアではよく見かけましたし、外を歩いていると昼間でも売人が「ガンジャ、ガンジャ」と言って売りつけてきます。同年代の日本人が吸っているのを見てなぜか失望したのを覚えています。アムステルダムでもいましたね。あそこは大麻が合法なのでいいのですけど、コーヒーショップじゃなくて部屋で吸っている日本人がいて、彼がハイになってるのを見て自分は無理だなと辟易したこともあります。それ以外では、僕が欧米で泊まったホステルはどこもクオリティ高かったです。多少の当たりハズレはあったとは言え、長期間の旅では宿選びが本当に重要だってことを改めて実感した次第です。
ちなみに、ホステル、特にドミトリールームでいちばん気をつけなければいけないのが、盗難。最大10人の見知らぬ人と同室になるので、貴重品の管理ほど神経を使うものはありません。幸いにして僕はまだありませんが、同室の人と話しているとどこどこで何を盗まれたという話をよく聞きます。携帯電話(スマートフォン)がいちばん狙われるようです。また、外に出れば、大きな荷物を持った旅行者をターゲットにした強盗や恐喝が頻発しています。間違ってもこの映画のような殺人クラブに巻き込まれるなんてことはないはずですが、旅先で気が緩んでいる隙を突いて犯罪のプロは近づいてくるのです。この映画の主人公たちを観ていて、ホイホイついていくお人好しの日本人を重ね合わせてしまいました。気をつけましょう。なお、舞台となったチェコのチェスキー・クルムロフはとても趣があり魅力的な街です。ヨーロッパを旅するならぜひご一考を。拷問博物館は実在しますが。