マイ・ガール
(1991年 / アメリカ)ペンシルベニアの田舎町に住むベーダは、優しいパパとおばあちゃんと一緒に暮らす11才の女の子。ママはいないけれど、幼なじみのトーマスが心の支えになっていた。ある日パパの葬儀社に美容師のシェリーが雇われ、ふたりの間に愛が芽生えたのを知って大ショック。その夏、ベーダは初めてのキスと一生忘れない悲しみを経験する…。
いい映画を子供に見せることは大人の責務
僕が通っていた中学校では、芸術鑑賞会と題して、定期的に全校生徒が体育館に集まって映画を観る機会が設けられていました。それほど頻繁ではなかった(年に1度か2度)と記憶していますが、映画が上映される、まるまる2時間ほどが休講扱いとなったので、映画自体を楽しみにしているというより、退屈な授業がスキップされるからマシと捉えていた生徒も多かったです(かくいう僕もそのひとり)。
在校中に何が上映されたか、いまとなってはほぼ忘却の彼方ですが、「フィールド・オブ・ドリームス」と「ホーム・アローン」はかろうじて覚えています。ほかのタイトルも、いわゆる教育の場で好ましくない暴力や麻薬などを取り扱った作品ではなく、感動的な人間ドラマやコメディが主でした。これらの作品をチョイスしたであろう先生の立場になってみれば、中学生向きの明快で楽しめる作品をという前提で選んだとは思います。ですが、まだ人生の起伏に差し掛かっていない中学生にとっては、ドタバタ系のコメディや痛快アクションは別にして、深みがあって考えさせられる系の映画は授業と同じくらい退屈で、上映中、おしゃべりや悪ふざけがエスカレートし、怖い体育教師に怒鳴られるというケースがちょくちょくありました。
この映画は、まさにそんな中学生(もしくは小学生)向けの上映にピッタリの作品だと思います。主人公ベーダは11才と、おてんば盛りでありながら思春期に目覚めつつあるという年代で、中学生(の女子)ならリアルに共感できる心情がふんだんに盛り込まれています。物心つく前に亡くなった母親への思慕、父親の新しい恋人への反感、自宅が葬儀場なので実感はないながらも身近に死がある環境、近所に住む国語教師への淡い恋心、幼なじみで弟のようなトーマス・Jといたずら三昧の毎日、そして身近に感じていたはずの「死」が実際に訪れた時のショック……。
正直、いい大人になった僕にとっては、それほど熱を入れて観る作品ではなかったのですが、こういう映画はぜひ同年代の人たちに見てほしいし、何かを感じ取ってほしいと思います。映画というのはもともと宣伝が目的だったという経緯があり、いまはエンターテイメントに軸足を置いていますが、そのメッセージ性の強さは今も昔も変わりません。だから、大人は子供に見せる映画に責任を持たなければならないはずです。痛快アクションやドタバタコメディもいいですが、子供たちが自身で何かを感じ取るきっかけになる映画を見せてあげること。僕の中学校でいまも芸術鑑賞会をやっているのかわかりませんが、続いているのであれば、そういう映画上映会になっていたらいいなと思います。