レールズ&タイズ

(2007年 / アメリカ)

鉄道技師のトムは、妻の病気と向き合えないでいた。しかし、鉄道事故で孤児となった少年を引き取ったことで心に変化が生じ、次第に妻にも心を開いていく…。

鉄道マニアは人生を追い続ける

男性が乗り物好きであるということは知られた話です。小さい子供に何かプレゼントしてあげようと思ったら、男の子には車のおもちゃ、女の子には人形というのが定番になっています。なぜそうなのかは、心理学や生理学を駆使すれば導き出せるのでしょうが、簡単に言ってしまえば男性は「空間認識力」に長けているからだと説明することができます。この空間認識力とは、つまり遠くの獲物を早く見つける能力のことで、かつて男性の役割だった狩猟の経験から来ているとのことです。だから、男性は平面、立体を縦横に進んでいける自動車や飛行機が大好き。対して、女性は立体感を把握する能力に劣っているため地図が読めないという説は有名ですね。

なので、乗り物名の後に「マニア」が付く愛好家のほとんどが男性です。自動車マニア、バイクマニア、飛行機マニア、船マニア(これはあまり聞きませんが)。最近は健康志向でツーリング用の自転車に乗る女性も多いようですが、やはりマニアの領域となると男性には歯がたたないでしょう。かく言う僕も飛行機が大好きで、乗降口で搭乗を待っている時など、ワクワクしてしまい落ち着かなくなってしまうほどです。何と言いますか、自分が操縦していなくても、飛行機の各部がまるで自らの手足になったかのように錯覚してしまうんですよね。こうした傾向は、マニアにかぎらず、自動車好き、バイク好きの方には共通なのではないかと思います。

それぞれの乗り物に惹かれた理由。なぜバイクマニアになったのか、なぜ飛行機マニアになったのか。理由なんてない、好きだから好きだという答えが返ってきそうです。おそらくそうでしょう。僕もそうです。男性は直感的にこれぞ俺の世界だと感じた瞬間、もうそれに没頭している生き物なのですから。ですが、乗り物は乗り物でも、鉄道は他と一線を画するように思えてなりません。なぜなら、鉄道は、自動車やバイク、飛行機などとは異なり、あらかじめ敷設されたレールの上をひたすら走る乗り物だからです(飛行機も航路がありますが気流の影響などで別ルートを取ることがある)。決められた路線を往復する鉄道を愛する人の性格は、少なくとも自由奔放とは言えないことが見て取れそうです。

さて、この映画の主人公トムは特急の操縦を担当する鉄道マン。ある日、自殺目的で踏切内で停車していた車を轢いてしまい乗っていた女性が死亡、トムは規則通りに運行していたのか審問にかけられることとなります。その後、自宅謹慎していたトムの家に、轢死した女性の息子デイビーが現れ、恨み節を吐きます。追いだそうとするトムでしたが、妻メーガンに諭され一日だけ面倒を見ることに。トムとデイビーは共通の趣味である鉄道の模型を通して距離を縮めていきますが、末期ガンに蝕まれたメーガンは徐々にその生命の炎を細めていくというストーリーです。

同じレールを走る模型の列車を見てはしゃぐトムとデイビーに対し、宣告された死期通りの寿命というレールをたどっていくメーガン。同じレールでも、男たちが夢を見ていた一方で、女は現実に従っていた。両者はもしかしたら同じレールを歩いていたのかもしれない、だからメーガンはトムとデイビーを暖かく見守っていたのに対し、トムたちはメーガンの死を受け入れた。もしトムとデイビーが人生というレールそっちのけであちこち飛び回る性格だったら、ラストで前向きな一歩を踏み出せなかったことでしょう。涙なしには観られない素晴らしい映画でした。


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