ダーウィン・アワード

(2006年 / アメリカ)

愚かな死に方をした人に贈られるダーウィン賞マニアでサンフランシスコ市警のマイケル・バロウズは、犯人を取り逃がし保険会社に転職し、保険調査員シリ・テイラーとコンビを組む。保険者の死因についてダーウィン賞のような愚かな死に方をしたと主張するバロウズにテイラーは困惑したが、彼の手腕が明らかになるにつれ徐々に親しくなり、さまざまな保険者の死因を推理する。

生きるか死ぬかよりどんな死に方をするかが問題だ

僕は知らなかったのですが、この映画のタイトルにもなっているダーウィン賞は、映画の創作ではなく実際に存在する賞とのことです。愚かな行為により死亡する、もしくは生殖能力を無くすことによって自らの劣った遺伝子を抹消し、人類の進化に貢献した人に贈られるということで、これをブラックユーモアと片付けてよいのかどうかは考えどころ。どんなに情けない死に方でも、死は死なので、それをあざ笑うような顕彰はいかがなものかと思ってしまうのは僕が日本人だからでしょうか。それに、受賞を狙ってそんな死に方をしたとはまさか考えられず、そのほとんどは意図せず偶発的かつ事故的に起きてしまったはず。本来は善良に生きていたにもかかわらず、そんな死に方をしたばかりに「死んで当然」とか「死んでよかった」などと笑われるようでは、本人はどんなにか九泉の下で歯噛みして悔しがることでしょう。そう言えば、アメリカにはラジー賞のように最低の映画を選出するものをはじめ、ブラックユーモアどころではないかなりどぎつい顕彰があることを考えると、これはもう一種の文化として納得するしかないのかもしれません。

さて、このダーウィン賞ですが、受賞するにもただ単にお馬鹿な死に方をしただけではダメで、厳然とした5つの条件をクリアしなければなりません。まず「子孫を残さないこと」。愚かな遺伝子を後世に伝えないことが賞の本義なので、これが大前提となります。次に「優れていること」。お馬鹿はお馬鹿でも、独創的でハイレベルな水準を求められるということだそうです。3つ目は「自ら自然淘汰を行うこと」。自分の行動が原因で死ぬことじゃないとダメみたいです。「正常であること」。精神的疾患などで突拍子のないことをしでかすのはNG。最後は「真実であること」。つくり話でないことはもちろん信頼できる情報元が必須のようです。こうした厳しい条件を見事クリアし栄冠(?)を手にしたのは、商品を盗もうとした自動販売機が倒れてきて圧死したとか、バンジージャンプして紐が長すぎて地面に激突死したとか、シェリー酒を浣腸してアルコール過剰摂取で死んだとか、たしかに末代までの恥と言っていい情けない死に方のオンパレード。いかにブラックユーモア好きのアメリカ人といえども、この賞を受賞できたからといって何のメリットもあるはずがなく(賞金はいくらもらえるのか調べても見つかりませんでした)、遺族は一生身につまれる思いに駆られるのではないでしょうか。

この映画は、ダーウィン賞ものの死に方に絡ませた保険金詐欺を見破っていく作品ですが、たとえ保険金が下りたとしても受け取る側は複雑でしょうね。かっこいい死に方なら胸を張って受け取れるという言い方もおかしいですが、アホらしい死を元にして大金を手にするってのもちょっと。ただ、詐欺だから不正にお金を得ることができれば目的を達したとも言えるわけで、騙せるのなら死に方なんて別にどうだっていいという考え方もできます。「死の瞬間に男の価値は決まる」とか「死に方用意」という言葉がある日本に生まれた僕としては、今際の際には立派な往生を遂げたいという気持ちは、どんなに自暴自棄になっても変わることありません。取るに足らない、つまらない人生ではありますが、せめてダーウィン賞ものの死に方だけは避けるため、足元にバナナの皮が落ちてないか、ボディソープ付けすぎて足を滑らせないよう、気をつけようと思います。


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