ソーシャル・ネットワーク

(2010年 / アメリカ)

「facebook」創設秘話を描いたドラマ。ハーバード大に通うマーク・ザッカーバーグは、恋人に振られた腹いせに作った女子学生の人気投票サイトで注目を集めるが…。

次世代SNS誕生のヒント

日本でインターネットが普及し始めた90年代には、すでにネット上で日記を交換し合うサービスはありました。僕も名前は忘れましたが、マイクロソフトが提供していたサービスに登録していた記憶があり、いま考えてみれば、これが人生初のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)体験だったかもしれません。ですが、当時学生だった僕はブラウザを立ち上げて自身のページを更新することより、単純に友人同士でEメールを交換し合うことのほうが多かった。当時はまだインターネットのことがよくわからなかったのが一番の理由ですが、それに加え、ネット上で知り合った顔も知らない人と交流することに強い抵抗を感じていたからでもあります。

その後、だんだんとネット人口が増え始め、僕もネットを介した商品の注文や決済、オークション、ネットフォーラムへの参加など、顔の見えない人たちとのやり取りに馴染んでいくようになりました。やがて、ブログとかメッセンジャー、スカイプなどを通し、日本人とだけではなく、海外、特に中国、台湾、香港、韓国などの外国人との交流にも積極的になり、アジアを長期一人旅した時はそういったネットサービスで知り合った現地人と実際に会ったこともあります。彼らは自分のメッセンジャーやスカイプのプロフィール欄には必ずSNSのURLを貼っており、そこには彼らが行ったところや食べたものなど、日常的な記事が掲載されていました。したがって、僕は彼らと会った後も、彼らがどんな生活をしているのか知ることができたのです。

さて、この映画は、いまや世界で5億人が登録しておりSNSの雄たる資格十分の「フェイスブック」を取り上げた作品。大学生時代のマーク・ザッカーバーグがいかにしてフェイスブックを立ち上げ、登録者数を増やし世界的なツールに育てていった過程が描かれています。ただ、単なるサクセスストーリーではなく、仲間内での意見の食い違いや、パクリを主張するグループとの対立によって生じた係争を下地に、裁判チックに描いているのはいかにもアメリカ的だなと思いました。

それはともかく、こうして映画になるまでの世界的社会現象となったSNSはこれまでなかったのではないでしょうか。ツイッターもたしかに大きなパワーを持っていますが、やはりフェイスブックには敵わないでしょう。それはツイッターがこれまでのSNSの主流であった秘匿的(実名でなくてもOK)であるのに対し、フェイスブックは実名登録制で本人性がないと削除されてしまうからという点です。僕もフェイスブックのアカウントは持っており、中学高校の友人と思わぬ“再会”を果たした時にはすごいツールが現れたと思ったものです。

匿名でない本人が発する情報なので信憑性があり、承認した相手同士による拡散力もある。アラブの春を見る限り、言論の自由のない中国共産党が必死になって革命の波及を揉み消そうした理由がわかります。このように、SNSは単純に個人と個人の交流だけでなく、国家をも転覆させてしまう力を孕んでいることから、単なる娯楽ツールとは言えなくなっている現状であり、上手く使いこなせる人とそうでない人が出てくるのは当然のことわりでしょう。

それにしても、SNSの歴史を見ていくと、簡単な日記交換、チャット、コミュニティでの交流、実名での限りなくリアルに近い交流と、さまざまに変容していっているのがわかります。では、SNSの進化はフェイスブックで完結なのか。いや、そんなことはないでしょう。その理由はフェイスブックがどのような経緯で誕生したのかを知ればわかります。

それは「気になる女の子のことを知りたい」という、若者らしい包み隠しのない下心。それでもいまや登録者数は世界で5億人を超えているのです。それに、友だち同士の交流サイトを作ることはそれほど難しいことではありません。ページを動的に遷移させるためのプログラミング言語PHP、データベースを操作するSQL、それにコンテンツをリッチに見せるCSSやJavaScriptをある程度勉強すればそれなりのものができてしまいます。僕はプログラマではないのですが、本で勉強して実際に実現しています。つまり、一大ムーブメントにつながるツールを実現するということは、必ずしも超一流のプログラミングスキルが必要ということはなく、たとえ不純であっても、はっきりとした動機とアイデアなのだと言いたいのです。こう考えてみると、次なるSNS誕生の立役者となるのは、もしかしたらあなたかもしれませんね。


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