ジョニー・マッド・ドッグ

(2008年 / フランス)

元少年兵たちをキャストに配し、内戦が渦巻くアフリカ・リベリアの現状を描いた戦争アクション。反政府軍を名乗り、遊びのように銃を乱射しては暴虐の限りを尽くす少年兵部隊のリーダー・ジョニーを中心に、子供たちの狂気を凄惨なタッチで描く。

親が子供に教えるべき世界とは

ジョニー・マッド・ドッグ

僕がまだ地元にいた頃、住んでいた小さい町内を、爆音を轟かせながら走り抜けるバイクの一団によく悩まされました。4、5人だったので暴走族というほどの規模ではないため、田舎ヤンキーとでも呼んでおきましょうか。彼らは、いつも大通りを(といっても片道一車線の市道ですが)猛烈なスピードと爆音で駆け抜け、時にはスピーカーから大音量の音楽を垂れ流したり、いい気になって奇声を発したり、とにかくやりたい放題といった感じでした。彼らの素性は知れませんでしたが、どことなく僕と同い年くらいに見えました。そんな彼らが巨大なバイクを所持し、しかも大々的な改造まで施しているのを見るにつけ、どうせ親にせがんで買ってもらったものだということはひと目でわかりました。彼らの親が自分の息子の所業を黙ってさせるがままにしていたのは、親としての監督責任放棄で何らかの処罰をあたえられてしかるべきです。夜だけでなく、時には朝方に爆音を轟かせたこともあって、僕は頭がどうにかなってしまいそうなことが多々ありました。

こういう田舎ヤンキーとは、言うまでもなく「ひとりでは行動できない自己認識の乏しい若者の集まり」だということ。ひとりでは何もできない、つまり個人としての自信がないため、集団を作って初めて自己主張の場を見出し、そこでやたらと見栄を張る。そして、改造バイクという凶器を手にした彼らは、力が弱く無抵抗の一般住民に、自らの偽りの力を見せつけて優越感に浸ります。そうした彼らには、家庭の事情やいじめ、ドロップアウト、社会不適合などで居場所をなくし、誰かに甘えたい、認めてもらいたいという感情が人一倍強いというバックグラウンドがあるケースがよく見受けられるようです。話はわかるのですが、それとは正反対に親に思い切り甘やかされても非行に走りる奴らもおり、親はそんな彼彼女を叱りつけることすらせず欲しい物を買い与え、やりたいことをやらせるのは理解が及びません。こんな感じなので更生する機会は一生失われ、ろくな大人にならずろくな人生も送ることができず、負の遺伝子を自らの子にそのまま受け継がせるというスパイラルが生じるのでしょう。

それに比べて、という言い方は相当不謹慎ではありますが、内戦状態にある国の少年少女が銃を持つ理由が甘えや自己顕示欲からではあるはずがありません。彼らは小さい体に大きなライフル銃を抱え込み、市民を威嚇したり敵対勢力を見つけたら容赦なく発砲するようになり、その様はまさに「銃を持った暴走族」なのですが、彼らはそれでストレスを発散しているのではありません。彼らはもともと戦災孤児や貧困等の理由によるストリートチルドレンだったのを、ゲリラ組織に連れられ兵隊をとして仕立てあげられたのです(中には給金目当てなのもいるようですが)。彼らは本隊の尖兵として使われ、特攻隊として使われるだけでなく、斥候、スパイ、運搬、時には性処理として利用されることもあるとのこと。要するに、子供だから相手の油断を誘おうというわけです。そんな彼ら(たいてい洗脳されている)がすることといったら、戦うことしかありません。相手を見つけたら即殺す。相手でなくても怪しい一般人は即殺す。なぜなら、自分自身が敵から、そして味方からも殺されないために。誰にも甘えることはできないし、甘えを見せたら速攻で殺されてしまうのです。

果たして、田舎ヤンキーにこんな世界が理解できるでしょうか。喧嘩して怪我したら親が治療費を払ってくれ、転倒したバイクが破損したら親が修理費を払ってくれる。どうせこの程度の惰弱なメンタリティしか持ち合わせていないのですから、遠い海の向こうの現実など理解できるわけがないでしょう。そんな彼らにしたのは、何度も言いますが彼ら自身の親です。子供可愛さで甘やかすあまり、取り返しの付かないことになっていてもまったく気づかない。この時点で親失格ですが、さらにもっと落第点なのは、自分の子供に世界の広さを教えてこなかったこと。日本、それも自分が住む地域だけがすべてだと思い込ませてしまったために、地元で暴れる田舎ヤンキーが量産されてしまった。自分自身の命すら体を張って守れない田舎ヤンキーは、そんな自分自身をカッコイイと思っており、傍から見ると嘲笑の対象でしかないことには一生気づかないのですから目も当てられません。


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