スリー・キングス

(1999年 / アメリカ)

勝利が確定し、イラクから帰還の準備を始めるアメリカ兵たち。そんな中、彼らは偶然にも大量の金塊のありかを示された地図を手に入れるのだが…。

マスメディアと政治の実態を訴えた意欲作

ここ数年で、テレビや新聞といったマスメディアに対する信頼はガタガタとなってしまいました。原因は言うまでもなくインターネットの普及によるもので、日本を貶める報道をしている、日本または日本人の活躍を報道しない、自分たちが儲けるためだけに情報を歪曲している、といった怒りの主張が連日ネット空間を飛び回っています。抗議はネットの中だけにとどまらず、NHK受信料契約の解約、スポンサーへの電凸、繁華街でのデモ行進など、実際に多くの人が行動を起していることからも、このトレンドが一時的なものでないことを物語っています。僕もそのうちのひとりです。

これまで正しいこととして教えられてきたことが実は洗脳の一環に過ぎなかった、という事実を知ったとしたら、誰でも頭が真っ白になって膝から力が抜けていく脱力感を味わい、その後にはいままで踊らされてきたことに怒り狂います。それが最も強く顕現したのが「歴史認識」。日本軍は戦争中にアジアの人たちに対しとんでもないことをしたという例の自虐史観です。特に従軍慰安婦と南京大虐殺の嘘については、多くの日本人が自国の歴史に目を向けるきっかけになり、いまや本屋を除くと嫌韓、嫌中、大東亜戦争肯定論などの本が目につきやすい場所に平積みになっています。「戦後レジームの脱却」を掲げた安倍自民党が圧倒的支持を受けて当選したのも、民主党の失政以上に、こうした背景があったからこそです。

では、この現実をテレビ・新聞は報道しているでしょうか。一部の機関を除いて、彼らは客観的事実を伝えるだけで現代社会の変容を深く掘り下げることはしません。なぜなら、彼らには「報道の自由」があるから。つまり、報道「する」自由は当然のこととして、報道「しない」自由もあるとするからです。この「する」「しない」という二択が国民の利益につながるものであれば納得できますが、一握りの人の意向を各社横並びで報じ、また報じないという姿勢が広く知れ渡ってしまったから国民は怒っているのです。特定人種が重大犯罪を犯してもほとんど報道されない、外国人世帯が不正に生活保護を受給している事実を報道しない、既得権益者を守る法律が可決されても報道しない、中韓が世界で反日行為をしていることを報じない。国民がどんなに怒っても、日本のマスメディアは「社会の公器として人道的配慮に徹した」などと頬かむりをするからたちが悪い。

マスメディアも企業なので、国家権力に屈したりスポンサーの顔色をうかがうのはわかる。問題はその姿勢が改められる気配がないことなので、今後は「これはおかしい」と気づいた国民がネットなり著書などで主張をし、周知を活発にしていくことが重要です。そういった意味で、この映画はとても羨ましいと思えました。湾岸戦争直後のイラクを舞台にしたアクション映画なのですが、随所に「この戦争に正当性はなかった」という主張がなされています。特に印象的だったのが、「アメリカは世界の紛争を調停する」と言った米軍捕虜に対し、イラク人が彼の口を無理やり開けて「紛争している地域は他にもあるじゃないか。なぜクウェートなんだ。本当の目的はこれだろ」と重油を流し込むシーン。アメリカも自国の利益のために動いています。だから資源も何もない不毛な地域の紛争に莫大な軍事費をかけて介入することなんてあり得ません。一方その頃、僕ら日本人はテレビを通して、重油にまみれた海鳥がかわいそうとイラクを憎むよう誘導されていました。

こうした政府を批判する内容の映画は日本では作れないでしょう。いや、作らせないでしょう。それはつまり、日本政府への批判は日本政府を背後で操っているアメリカへの批判となるからです。アメリカという国は身内からの批判は甘んじて許すが、外からの間接的な批判は許さないという強かさを持った国という事情が透けて見えます。この点において、日本はまだまだ独り立ちできないのかなと空悲しくなってしまいます。


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