アルティメット

(2004年 / フランス)

時限爆弾が持ち込まれた近未来のパリを舞台に、国や妹を救うために24時間のタイムリミットに挑むふたりの男の戦いを描く。

大人のための童話的アクション映画

冒頭から10分観ればすぐにわかりますが、この映画は少年マンガそのものです。悪い奴らに因縁をつけられ一度は撃退すれど、大切な人を人質に取られ立場が一転してしまい窮地に陥ってしまう。臥薪嘗胆しながら人質の奪還のタイミングを待ち続けるうち、本来なら敵対関係にある人から協力を求められる。初めは互いに警戒して連携はぎこちないが、敵の本拠に乗り込んで戦っているうちに次第に両者の壁は氷解し、信頼を基にしたチームワークで目的を勝ち取る。というパターンのマンガやアニメは子供の頃さんざん見たり読んだりしていたはずだし、胸踊らせながら自分もいつかああいうカッコイイ男になりたいと夢を追ったはずです。かくいう僕もそういうマンガが大好きでした。大人になった今でこそ、客観的視点から見るとどこにでもある少年マンガの常道と切り捨てるところですが、なんのなんの途中で飽きることなどなく、最後まで一気に見てしまいました。

ところで、こういった少年マンガの王道的展開は全世界共通のものなのでしょうか。おそらくそうでしょう。子供に夢と希望を与える動機付けというのは、青少年の健全育成の観点からは特に重要ですし、国家としては敏感な感受性を持った子供たちだからこそ勧善懲悪という名の愛国心を育んでほしいという意図もあるでしょう。この王道パターンで訴えたいことは3点あります。ひとつ目は「自分の命をとしてでも愛するものを守ること」。ふたつ目は「たとえウマが合わない仲間でも共通の目的のために力を合わせること」。そして、3つ目が「一度決めたことを最後までやり通すこと」です。こうやって書き出してみると、なんか歯が浮きそうになりますが、誰だって子供の頃好きだったマンガの内容はこうだったはずですし、いま子供たちの間で人気のマンガもこんな感じだと思います(確証はないですが)。

さて、この映画をそのまま子供たちに見せて正義感と友情を育んでほしいという親がいるのかどうかです。おそらくいないでしょうが、自分たちが観たらきっと情感を高ぶらせるはずですし、俺たち私たちも小さい頃こういうマンガ読んでたっけ、いつか子供たちにも読ませてやりたいなと懐かしむのではないでしょうか。さすがに、暴力的なアクションや薬物などのアウトローな世界観なので、小さい子供には向かない、むしろ見せないほうがいいとは思いますが、かつて子供だった大人がこういう映画を観て、自分が小人子供だった頃どういうマンガを読んで感動し学んだのか、それを思い起こすいい機会になるかと思います。子供には子供の道義心を育む作品が必要なように、大人には大人としての役割を再認識させる作品が必要ということなのですね。


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