TAXi
(1998年 / フランス)偶然知り合ったスピード狂のタクシー運転手・ダニエルとドジで冴えない新米刑事・エミリアンは、ドイツから来たベンツの強盗団を追い掛け時速250kmのカーチェイスを繰り広げる。
僕がタクシーを利用しない理由
僕はタクシーをほとんど利用したことがありません。したことがないというより、できるだけ「利用したくない」と思っています。別に、タクシー独特のにおいが嫌だとか、メーターが気になって落ち着かないからだとか、運転士との相性が気になるだとかというわけではなく、なんとなく「甘えている」ような気分がしてしまうからです。もちろん、タクシーを利用することが甘えているなんてことは根拠のないことです。それに、公共交通機関が不便な地方に行ったら、レンタカーを借りる以外、タクシーを足として移動するほかないですし、また土地勘のまったくない外国人にとって、目的地の目の前で降ろしてくれるタクシーはなくてはならないものでしょう。たしかに、都内であれば2駅分くらいなら歩ける距離です。でも、だからといって、その2駅分の距離でもタクシーを利用する人を軟弱者呼ばわりするのはおかしいですよね。でも、僕はどうしてもそう思ってしまうのです。
では、なぜ僕はタクシーを「利用したくない」として避けるのか。それは、僕が海外旅行をする際、必ず決めていることから来ています。つまり、移動する際はできるだけタクシーは使わず、現地の交通機関を使うこと。よっぽど辺鄙な場所は除き(そういうとこはそもそもタクシーすらない)、観光で訪れるような街は観光客、地元の人向けかかわらず、公共交通機関が発達しているものなので、これを利用しない手はありません。それに僕は、海外に行ったら、観光客向けの施設の利用はなるべく避け、地元の人が利用するレストラン、雑貨店などを利用し、地元の人目線での滞在を心がけています。移動は当然、バスか鉄道、あるいは徒歩。タイだったらトゥクトゥク、ベトナムだったらバイクタクシー、インドだったらリキシャといった具合に、各国特有の交通機関に乗ることは、現地の料理を味わうのと同じくらい楽しみです(値段交渉がかなり面倒ですが)。だから、僕が海外でタクシーを拾ったことがあるのは、まだ旅慣れていない頃か、本当に必要に迫られた場合以外にありません。
とはいえ、実のところ、タクシーだと費用がかさむので節約したいから利用を控えているだけです。物価の安いアジア各国なら、多少ボッタクられてもタクシーを使ったほうが断然効率的なのですが、それでも僕は現地交通機関にこだわります。中でも、いちばん面白いのが、路線バスです。1回の乗車につき数十円で済むし、大きな街だったら路線がかなり充実しているので、どこに行くにも不便しません。さらに、特に面白いのが、目的地を決めず、適当なバスに乗って適当な場所で下りて適当に散策して戻ってくること。乗ってきたバスの番号を覚えておけばいいので、帰りは反対方向の同番のバスに乗ればいいだけです。中国やタイでは、こんな感じで1日じゅうバスに揺られて街探索や人間観察をしていたものです。降りる場所を親切に教えてくれた乗務員さん、果物をくれた隣の席のおばさん、つたない日本語で話しかけてきた青年、車内ラジオの歌に合わせてみんなで合唱したりと、いろいろな出会いがありました。タクシーに頼りきりだったらまずあり得ないことだと思います。
僕は別に、タクシーが人間同士のコミュニケーションを壊すだなんて言っていません。むしろ、親切な運転士さんとの出会いが人生という道筋を切り開いてくれることだってあるでしょう。ただ、「効率化」「迅速化」「最適化」などという現代社会のキーワードとなっている事柄の背後で、新たな発見の原石が無条件に切り捨てられていくのはあまりにもったいないと考えます。たしかに、コストパフォマンスは大事です。でも、時間をかけてゆっくり育てていって成し遂げられるイノベーションも存在するのです。タクシーを利用することのメリットは当然のこととして承知していますが、それでも僕は歩いてみようと思うのです。