パディントン

(2014年 / イギリス・フランス)

イギリス・ロンドン。真っ赤な帽子を被った小さな紳士が、はるばるペルーから家を探しにやってきた。やっと出会った親切なブラウン夫人に“パディントン”と名付けられる。

ゆるキャラの正体

パディントンに限らないのですが、クマという動物は可愛らしくて愛嬌のあるキャラクターとして描かれることが多いように思います。ミッキーマウスやトムとジェリーなどのように、あちこち動き回ったりピョンピョン飛び回っているのではなく、どこかのんびりキョトンとしている感じ。検索してみると、くまのプーさんをはじめ、リラックマ、ファーファ、ブラウン(LINE)、モモとコモモ(ソネット)、くまモンなど、すでにお馴染みとなっているキャラクターがたくさん引っかかりました。昨今のゆるキャラブームの火付け役のなったのもくまモンですし、これらのクマキャラからは、どこかゆるくてマイペースなイメージを抱きますし、いまやイヌやネコみたいな存在になってしまった感もあります。ネズミやネコ、フクロウ、アザラシといった、直接人間に危害を加えることのない比較的おとなしい動物が、そういったキャラクターとして確立することはわかりますが、なぜクマがそれに取って代わろうとしているのか。日本のみならず世界中で愛されるキャラクターの原型としてのクマは、本当に愛嬌があって人間に無害な動物なのでしょうか。いえ、実際のクマは非常に危険な動物です。

クマは、クマ科に属する大型の肉食哺乳類。日本でもクマが生息しており、古くから危険な動物として認識されてきました。そのうち代表的なのがツキノワグマとヒグマですが、危険なのは圧倒的にヒグマのほうで、全長は2.5~3メートルほど、体重も大きい個体では500キログラムを超えます。このヒグマが起こした食害事件は数多く記録されており、1915年の7名の死者と3名の重傷者を出した三毛別羆事件、1923年に5名の死者と3名の重傷者を出した石狩沼田幌新事件は有名。ヒグマは日本では北海道にのみ生息している(ツキノワグマは本州と四国)ので、北海道では「熊出没注意」の看板をよく見かけます。クマが人間を襲う理由のひとつは、食料を求めて山から人里に降りてくることですが、食いだめをする冬眠前の秋がもっとも危険な時期とされていて、山菜採りなどでクマのいる山に入ることは非常に危険。あと、子グマを見つけて可愛いからと近づいていくこともご法度で母グマに襲われる可能性がとても高いです。結局、人間の身勝手さが招いた結果と言えるわけですが、巨大なクマに人間が力で敵うわけがなく、決して平和で愛玩的な動物ではありません。恐ろしいのは、愛されキャラとなったクマの原型が、茶色い体毛が特徴的なヒグマだということなのです。

だからと言って、間違った認識を捨て去るため、いますぐクマのキャラクターを差し替えろと言っているわけではありません。作られたシンボルと現実は区別しなければならないということです。可愛いイメージのキャラでは動物の中で一、二を争うパンダは、たしかに外見は愛嬌があって可愛らしいですが、クマ科の一種です。例を挙げればキリがないですが、結局は人間によるご都合主義の妄想だということ。本当は危険だけどゆるキャラになってしまうのは、平和を希求しているだとか戦争をしない国にしようとかいうイデオロギーを通り越して、完全に世界はひとつだというお花畑的ファンタジーに基づいていると考えてしまうのは僕だけでしょうか。


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