ターミネーター4
(2009年 / アメリカ)人類滅亡を目論むスカイネットによる核攻撃を生き抜いた人々は抵抗軍を組織。大人になったジョン・コナーも最前線で戦っていたが、ある日彼はマーカスと名乗る謎の男と出会い…。
ナンバリングタイトルから逸脱する勇気
「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といった人気ゲーム作品は、新作が出るたびに、Ⅰ・II・III・IV…といった具合に数字でタイトル付けされていくのが一般的です。これをナンバリングタイトルといいます。「シリーズ作品の派生ではない主作品」「題名に数字が入ってる作品」「正当な続編」を意味する和製英語だそうです。これに対し、番号が付いていないタイトル、たとえば「ドラゴンクエストモンスターズ」や「ファイナルファンタジータクティクス」は、外伝・スピンオフという位置づけであり、いわゆる正伝扱いではないとのこと。ビッグタイトルになればなるほど、派生作品として本編中の他のキャラを掘り下げた作品や前日譚後日譚のような外伝が作られたり、キャラや世界観を借りて違うジャンルのゲームを作るようになるので、本筋(ナンバリングタイトル)との線引を明確にしないとユーザーが混乱するし、また作品のブランド感をより高める意図もあるわけです。
この傾向はもちろん映画でも同じです。第一作がヒットしたらその続編には当然のように、タイトルに通し番号がふられたものとして発表されます。考えるまでもなく当然の話です。というのも、ヒットした第一作と続編を結びつけるのはあくまでもタイトルであり、それはすでに強烈な集客力を誇るキャッチコピーと化しているので、奇をてらう必要など一切ないわけです。なぜなら、「ドラゴンクエスト」第一作の続編のタイトルが、たとえば「ファイナルクエスト」とかだったら売れるでしょうか。あらゆるメディアを駆使してドラゴンクエストの続編であることを宣伝したところで、多くのユーザーに見向きもされずに大失敗を遂げることでしょう。さすがに3あたりまで続編を作ってブランドを定着させたうえであるなら、別タイトルにしたところで同一性を保て、ある程度のヒットは可能かもしれません。しかし、それでも継続的なヒットは不可欠。続編を作るたびに尻すぼみになっていき、正伝をストップしてスピンオフで起死回生で図るケースをよく見かけますが、第一作で確立したタイトルに付与されたネームバリュー頼みであるという現実に変わりはありません。
さて、この「ターミネーター4」という作品は、言うまでもなく、あの「ターミネーター」のナンバリングタイトル、つまり正伝です。と言いたいところですが、原題は「Terminator Salvation」であり、それまでの3作とは一線を画したネーミングとなっています(原題では3まではナンバリングされている)。3までの時系列とは異なった外伝(あるいは別物)として製作されたとの説も聞きますが、今作は前3作を受けた、新三部作の始まりだというのが正解なようです(製作会社の倒産により製作中止になったそうですが)。だとすると、なぜ日本公開版ではタイトルがナンバリングされていて、正伝の流れを汲むことを強調したものとなっているのか。「ターミネーター サルベーション」としたら売れないと判断したからではないでしょうか。ひと昔だったら「新ターミネーター」などとするのでしょうが、せめて副題くらい添えるべきだったのではないかと思います。これでもし続編が誕生するとしたら日本では「ターミネーター5」となるのでしょうが、そうしてしまうと原題が持つ色合いを損ねるどころか、世界観すら誤解しかねないこととなります。原題の和訳は映画の配給会社が決めるのでしょうけど、こういった釣り文句的なタイトル付けは、映画ファンの夢を壊すことになるということを理解してほしいと切に願います。