最高の人生の見つけ方

(2007年 / アメリカ)

勤勉実直な自動車整備工と大金持ちの豪腕実業家。病院で出逢い人生の期限を言い渡された二人の男性が、棺おけに入る前にしておきたいこととして“バケット・リスト”に書き出したことを叶えるため旅行に出かける。

棺桶リストを書くのが死ぬ間際では遅い

余命いくばくもないことを宣告されたとして、人生においてやり残したことをどこまで片付けられるか、いや、そもそも冥土の土産に何かパーッとやってやろうと思い立つことすらできるのかどうか、僕は疑問です。でも、たとえば、痛みや機能障害は何も感じないにもかかわらず3ヶ月後には眠るように息を引き取るという場合であれば、ちょっと考えるかもしれません。もちろん、医師から納得のいく病状の説明があり、僕自身それを受け入れられたらの話です。開き直ると言ったら変ですが、寿命を悟ったことで足枷から完全に解放された自由な心持ちになって、毎日ひとつずつは無理ですが、人生に悔いが残らぬよう、やり残したことやりたかったことに手を付けてみようと思うのです。少なくとも、一日一日を大切に生きようと思い至ることですね。ただ、正確に言えば、いきなりやり残したことを片っ端からこなしていこうとすることではなく、自分が生きてきた証としてこれだけはやり遂げよう、これだけは心残りないようにしようと、心の整理をする余裕を持つこと何じゃないかなとも思います。だから、その日が来るまで、思い立ったことを完遂できるかどうかはそれほど重要なことではないはずです。

もし僕がそういう立場になったとしても、「やり残したことをやるリスト」をあれやこれやと書き連ねることはできないと思います。別に何もしないでそのまま旅立ってもいいという意味ではなく、いま現実に健康でいられる段階で、成し遂げられなかったら死んでも死にきれないという大事業や願望は特にこれといって抱えていないからです。もちろん、栗入りどら焼きを腹いっぱい食べるとかカラオケボックスを1日借りきって歌いまくるとかいう、ほんの小さな、そしてくだらない考えはあるにはあります。ただ、こういうのは健康でいる間はやれても絶対にやらないことであり、単なる記念事業的な思いつきであるので、こうした代替の効くことにやり遂げた達成感など沸くはずもなく、逆に死ぬ間際になってもともとみすぼらしかった人生にさらに箔を付けてしまったという後悔だけが残るんじゃないでしょうか。いまのところ、余命3ヶ月を告げられたらヨーロッパ周遊の個人旅行をしたいと考えているので、死ぬまで牛丼を食べ続けるなんてつまらないことに余命を費やすことはなさそうですが。

とは言え、いちばん理想なのは、残り少ない命を告げられたら「泰然として動じず、それを運命として受け入れる」ことだと思います。もう少しで現世と別れるという段になってから、やりたかったことに手を付けるというのは、正直言わせてもらうと、最期の悪あがきだとか潔くないとかに思えてなりません。生前に自分の時間を持てないほど忙しかったというのはよく聞くケースですが、実際エグゼクティブと呼ばれる人たちの間では自分の趣味を十分に謳歌しているというのが珍しくありません。そこに至るまで休日返上で身を粉にして働いてきたからこその特権だという意見もあるでしょうけど、できる人というのは自分の時間をきちんと整理でき有効に使える人のこと。働き蜂が全員エグゼクティブになれない現実からしてもわかる話です。本当の意味でのエグゼクティブとは、会社や社員の管理・運営だけでなく、自分自身のこともうまく整理できる人のことなので、たぶんですけれどそういう人は死ぬ間際になって往生際の悪いことは言わないのではないでしょうか。あれもやってこれもやると、生に対する執着や未練を他人に見せるようなことはしないでしょう。

この映画にケチをつけたいわけではありません。余命を告げられた後に好きなことをすることで、精神的・身体的に良い影響が生じ、寿命が伸びたということも聞いたこともあります。だから、ライフスタイルの一環で考えれば、むしろ望ましいことだとも言えます。ですが、僕は、突発的な事故に巻き込まれる可能性があるとはいえ、寿命はまだある程度残っていると考えています。そのため、死ぬ直前になったらあれこれやりたいことをやろうとか、本当にやりたいことをやるのは死ぬ間際でいい、なんて決めつけたくないのです。生きているうちにやりたいことを見つけ、それを達成できるよう活動的になる生き方をしたい。bucket list(棺桶リスト)を書くのは、死ぬ間際になってからではなく、健康ないまのうちなのだと肝に銘じたいものです。


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