テッド

(2012年 / アメリカ)

下品な中年オヤジに成長したテディベア・テッドと大人になりきれないダメ男の友情を描いたコメディ。

ふて腐れ親父のテディベアにギャップ萌えを感じるか

思ってもいなかった意外な事実に直面してトキメクことを「ギャップ萌え」とか「ギャップ受け」と言うことがあります。一般的な商品に対してでも対人関係でも外見と内面が別人だったり別物だったりする場合に用い、もともと持っていたマイナスのイメージがその意外性や多面性からプラスの方向に覆されることを言い表すことがほとんどです。これはれっきとした人間の心理作用によるもので、行動心理学の専門家・目白大学の渋谷教授は「人は、モノやヒトにある程度の期待感をもって接します。その際、想像通りだと物足りなく感じるのですが、期待以上のよい裏切りを受けると、それが強い印象となって残ります。また、自分で食べてみようと思って買った製品が期待以上においしいと、肯定された気分になり、満足感につながってリピーターになるんです」と分析している通りです。大ヒット商品の背景には、この心理を利用したマーケティングがたいてい介在していると考えて良さそうです。

ただ、この「ギャップ○○」が用いられるケースというのは、対人関係、それも男女関係が圧倒的に多いんじゃないかと思います。たとえば、見た目は容姿端麗で完璧な美人なのに、どこか抜けてる天然なところがあるとしたら、男性はその人のことをどう思うでしょうか。外見は近寄りがたい雰囲気を醸し出しているのに、内面はおっちょこちょいで天真爛漫なところがある。「近寄りがたい完璧な美女」が、「フォローしてあげなくてはならない」要素を見せれば、男性の心がざわつかないはずがありません。これは女性に対しても同じことが言え、「草食系なのに頼もしい」や「コワモテなのに笑顔は可愛い」などの男性にキュンときてしまうのだそうです。これも、メーカーが新商品のマーケティングで用いる手法のように、異性の気を引くため意図的に「ギャップ」を創出することは可能ではありますが、空回りしてドン引きされることとなったら赤っ恥をかくどころではなくなるので要注意。あくまでも、自分らしさを心掛けたほうがまだましです。

さて、この映画からもそうした意図的な「ギャップ受け(萌え)」の息吹が強く感じられます。クマのぬいぐるみ、テッドが動いてペチャクチャしゃべるのはまだいい。だって映画ですから。で、テッドのバディが少年(少女)だったら完全にメルヘンとして観られるのでまだいい。ですが、35才の中年おじさんだから、わざとらしさを感じずにはいられない。しかも、女性遍歴を重ねてきた遊び人のような言動をし、酒やクスリを煽りまくるテッドのキャラ設定には仰々しいにもほどがある。そこが面白いということはわかります。でも、「見え透いてる」んです。男がこういう女を見かけたら「はぁ? なにこの勘違い女」とけなすでしょうし、女がこういう男に言い寄られたら「なに無理してんの? バカじゃないの」と目を吊り上げることでしょう。外見は幼い子供、でも内面はふて腐れ親父。可愛いとか面白いとか思う前に、普通に迷惑だと感じると思うのは僕だけじゃないと思いたいですが、映画なんで笑って済ませればそれでよしとすべきでしょう。ただ、そのうち「ギャップギレ(切れ)」なんていう新語が生まれるかもしれませんね。


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