ジャンヌ・ダルク

(1999年 / フランス、アメリカ)

15世紀、イギリスとの戦争に明け暮れるフランスに突如現れた17歳の少女、ジャンヌ・ダルク。「神の声を聞いた」というジャンヌは、国王の元を訪れ自分にフランス軍を指揮させてくれるよう懇願する。

悲劇のヒロインの未来

いまとなっては世界史上の人物というより、ソーシャルゲームの最高レアキャラとして認識されることが多くなってしまった感のあるジャンヌ・ダルク。貴い生まれではないごく普通の少女がある日、神のお告げを聞いたことでフランス軍を率いることとなり、敵対するイングランド軍を蹴散らすというヒロイックなエピソードがファンタジーっぽくて、スマホ向けのゲームではもはや欠かせない存在となっているのはたしかなこと(北欧神話も同様に)。うら若き乙女が男の戦場で剣を振るって戦うという、戦国武将が女の子になったり戦車に女の子が乗り込んだりする昨今のアニメ界における男女逆転現象を象徴している存在と言えるのかもしれません。それと「救世主」という側面も見逃せません。これまで剣など握ったことすらなかったひとりの少女が、劣勢だったフランスを盛り返し形勢を逆転させたのです。こういう神がかったキャラクターのレアリティが最高位でなくていいわけがありません。かくいう僕も、とあるソシャゲでジャンヌ・ダルクという名のキャラクターを保持していまして、アビリティや奥義が圧倒的に強いので大変重用しています。たぶんほかのゲームでも同じく強力なキャラクターとしてユーザーに愛されているのではないかと。

そして、もうひとつジャンヌ・ダルクの魅力を高めているのが、彼女がたどった「悲劇」でしょう。12歳のときに「フランスを救え」との神の声を聞いたジャンヌは、当時即位前だったシャルル7世へ謁見し、ひと目で彼を見抜いたことから騎士の装備を与えられ、フランス軍とともにオルレアンへと向かいます。ジャンヌ自身は軍旗を振って味方を鼓舞する役割だったそうですが、指揮の上がっていたフランス軍は10日間ほどでオルレアンを奪還。ジャンヌの名声は上がります。しかし、フランス王となったシャルル7世は厭戦気分となりこれ以上イングランドとの戦争を継続する気持ちが失せます。そんな中、コンピエーニュ包囲戦の最中、ジャンヌはブルゴーニュ公国軍の捕虜となっていまいました。捕虜解放の身代金交渉はされず、異端審問にかけられることに。敢然と審問に立ち向かうジャンヌでしたが、イングランドシンパのフランス人聖職者の詐略もあり、火刑に処され灰になるまで燃やされてしまいました。神の声を聞いた19歳の少女が軍を率い、侵略されてた祖国フランスを解放していったものの、一転して火あぶりという凄惨極まりない刑で命を奪われる。こんな悲劇ないですね。

審問では、彼女が異端であるという証拠も自白も取れず、そのため仕方なく戦場や捕縛中での男装を理由に異端を宣告したとのことです。それため、人一倍敬虔で、その活躍ゆえに「聖女」とさえ呼ばれたジャンヌにとってこれ以上の屈辱はなかったことでしょうし、だからこそ現代の僕らの心をつかむのかもしれません。ところで、源義経、真田幸村ら、悲劇のヒーロー、ヒロインと呼ばれる歴史上の人物もいつかは、ジャンヌみたいにソシャゲの最高レアキャラとして「列聖」されるのでしょうか。え、もうすでにそういうゲームあるとか……。


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