シャッター アイランド

(2010年 / アメリカ)

精神を病んだ犯罪者を収容する孤島・シャッター アイランドで、ひとりの女性患者が姿を消す。事件を調べるためふたりの連邦保安官が島を訪れる。

閉鎖された島に我が身を置く意味

シャッターアイランド

精神科が設置されている病院には、閉鎖病棟あるいは隔離病棟と呼ばれる病棟があります。任意入院のそれとは構造が異なり、文字通り出入り口が施錠され、自由に出入りできない病棟のことです。そこに入院するのは、急性期の精神疾患で興奮のために不穏、多動、暴力といった行為が認められる患者。具体的には、自傷や自殺の恐れがある、本人が意識しない自傷的な行為がある(自傷行為や自殺念慮)、他傷の恐れがある(急性期の統合失調症による妄想と幻覚)、重度のアルコール依存症があるなどとなっています。私物の持ち込みは制限され、自傷、他害のおそれのある紐や刃物なども持ち込めません。閉鎖病棟への入院は、あくまで周りの人や患者の保護を目的とし、適切な医療を保証するために行う、やむを得ない措置だからです。とは言え、刑務所の独居房や雑居房のような場所ではなく、病室にずっと閉じ込められていたり、つねに拘束されて身動きができないというわけではありません。ある程度の自由は認められているようです。

閉鎖病棟は、数人単位の病室がある中に、トイレや洗面所、食堂、ティールームなどが備えられているのが基本的な構造です。職員がカギを管理し、患者の出入りを制限していますが、病棟内の移動は自由です。ただし、自殺する恐れのある人や錯乱、器物破損など自分の行動がコントロールできない患者の場合、閉鎖病棟にある隔離室(保護室)を使用することがあるとのこと。隔離室では、心身ともに休みをとるために外部からの接触を遮断し、治療に集中します。最近はPICUという急性期、重症の患者を治療することを目的とした精神科集中治療室を設けている病院も増えているそうです。このように、閉鎖し、隔離し、時には拘束するというのは、周囲の人に害を与えるのを防ぐのみならず、精神疾患にかかった患者自身を守るための措置。統合失調症やうつ病などは、目を離すと自傷、自殺を誘引する場合があります。通院や自宅での療養では、こうしたリスクを完全にカバーすることはできないのです。

では、閉鎖病棟ではどのような治療が行われているのでしょうか。それぞれの症状に応じた治療は、一般の開放病棟で行われる治療と同じように、まず「薬物療法」による治療が行われます。代表的なのは抗精神病薬で、幻覚・妄想といった統合失調症の陽性症状を改善させます。症状に応じて「精神療法」も行われ、歪んでいる物事の捉え方や考え方(認知)を修正していく認知行動療法が代表的。次に、頭の左右のコメカミに電極を当て電気を流す「電気けいれん療法(ECT)」。統合失調症の治療法として行われていましたが、うつ病や双極性障害などにも効果があるそうです。ただ、これらの治療法にはメリットとデメリットがあり、薬物療法は即効性があるが薬をやめると再発しやすかったり、電気けいれん療法も即効性はあるが効果が短期しか続かないなど。

この映画に登場する閉鎖病棟ならぬ“閉鎖島”には、一般の病院では手に負えない重篤な精神病患者あるいは重大な犯罪を犯した精神異常者が集められています。そんな場所なので入島審査は厳重、管理も最大限の注意が払われています。普段は穏やかに生活している患者たちが、いつ何時精神が豹変して周りの人に危害を加えるやもしれぬ事態を考慮すれば当然と言えば当然です。そんな閉鎖島に、失踪した女性患者の足取りを追うため連邦保安官テディとチャックが訪れます。そこでいろいろ聞き込みをしているうちに、テディの身辺で不可思議なことが起こり始めます。これは本当に想定外のことなのか、実際にテディの精神が変調をきたしたのか、それとも単なる映画表現上の過剰演出なのか。結末としては、この手の作品にありがちな「実はこうだった」という灯台下暗し的な終りを迎え、あるタイミングでわかってしまうのですが、そこに至るまでの伏線がどうつながりエンディングはどんな意味を含んでいるのかを想像する楽しみは残されている感じです。解釈によって喜劇になるか悲劇は観た人次第ということで。

ところで、閉鎖病棟の患者は、自分自身が外からどう見られているかの認識はあるのでしょうか。偏見を承知で言うと、おそらく僕らはそんな彼らに強い不安を感じていると思います。


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