16ブロック

(2006年 / アメリカ)

ニューヨーク市警の刑事ジャックに課せられた任務は、16ブロック(区画)先の裁判所に証人を送り届けるだけのごく簡単なもの。だが、護送中、何者かに襲撃されてしまう。その証人が警察内部の不正を目撃していたのだ。法廷での証言開始まで残された時間は118分。不運にも警察を敵に回し、ジャックの人生で最も険しく、長い、わずか16ブロック先への<護送>が始まった・・・。

一度固定したイメージを払拭するには

16ブロック

一度付いてしまったイメージが完全に固定してしまい、どんなに他の人格を演じたとしても払拭することができない俳優は、パッと思いついただけでも結構いるものです。僕が真っ先に思い浮かぶのは、故渥美清さん。もう芸名が「車寅次郎」だったとしてもまったく違和感のないほど、「渥美清=フーテンの寅さん」というイメージは絶対的。渥美さんが「男はつらいよ」以外に出演している作品をいくつか観ましたが、どこをどう見ても問答無用で寅さんでした(出演しているのはたいてい山田洋次作品で、キャラクターも寅さんとかぶっていたということもありますが)。

寅さんの場合は、「男はつらいよ」が長寿作品だったのでイメージの固着は当然のことなのかもしれませんが、毛色の違う作品に出演していろいろな役を演じているにもかかわらず、過去に演じたハマり役をいつまでもひきずっている俳優は実に多いです。「ホーム・アローン」のマコーレー・カルキン、「ランボー」のシルベスター・スタローン、「ターミネーター」のアーノルド・シュワルツネッガーらがそうですね。

とはいえ、寅さんのように、誰もが同じイメージを想起するケースというのはそんなに多くないはずで、ある作品を通してその人がいちばん強く感じた印象がそのまま固着化するのが一般的なのだと思います。だから、シュワルツネッガーだったら、たいていの人は「ターミネーター」でしょうけど、人によっては「コマンドー」であっても何らおかしくはないのです。

僕の場合は、水谷豊です。彼の俳優としての一般的なイメージは、代表作である「相棒」の杉下右京の冷静で理性的なキャラクターなのでしょうが、僕はそれとはまったく正反対のイメージを彼に重ね合わせます。もうかなり前のドラマですが「刑事貴族」という作品で演じた本城慎太郎の直情的な熱血漢のイメージがいまだに抜けきりません。だから、「相棒」の水谷豊からは激しい違和感を感じるのです。さすがに「相棒」を全話通して鑑賞すれば彼のイメージは本城慎太郎から杉下右京に変わるのでしょうけど、一度付いてしまったイメージというのは変えることが難しいことがわかります。

このように、イメージというものは非常に厄介なものではあるのですが、一度植え付けてしまったイメージを効果的に変えることのできるテクニックが存在します。そのひとつ目が「ギャップ効果」。「見た目通りに優しい人」よりも「一見怖そうなのに実は優しい人」の方が印象が強く好感を持たれやすい効果を狙ったものです。この「こう見えて実は……」というギャップはショック療法的な成果を期待できます。もうひとつが「親近効果」で、「相手が自分に対して抱いた印象の中で、直近のものが非常に重要な意味を持っている」という効果を利用し、相手に「お!」と思わせたら相手の中でのあなたの印象は上書きされるのです。たしかに活用はできそうですが、一度付いたイメージが強烈であればあるほど、変えるにはそれを上回るほどのインパクトが求められることもまた事実です。

ここまでで、もう何を言いたいかわかったことと思いますが、さてあなたにとってブルース・ウィリスのイメージとは何でしょう。「アルマゲドン」でしょうか。「シックス・センス」でしょうか。いやいや、映画ファンならずとも誰もが「ダイ・ハード」と答えるはずです。“世界一ツイてない男”というキャッチコピーが指し示すように、まったく関与する必要のなかった大惨事に巻き込まれ、成り行きで嫌々ながら全身ボロボロになりながらも、結局やり遂げてしまう。劇中、彼は報われずボヤいてばかりで、幸福そうな表情は微塵も見せない。巻き込まれてしまった事件に逃げ腰と見せかけて立ち向かう、正義のヒーローとはかけ離れたキャラクター。それがジョン・マクレーン、いやブルース・ウィリスその人なのです。

この映画も展開こそ「ダイ・ハード」的でありダブって見えるところも多いですが、それもこれもブルース・ウィリスが主役を演じているからでしょう。たとえ彼が正義の旗を立て勇敢さを見せつけていたとしても、見るからに痛々しく報われない「ダイ・ハード」の役柄をなぞることになります。もうこれは仕方ないですね。製作側も彼をキャスティングする段階で、そういうイメージを狙っていたのでしょうから。だから、この映画はこれまでのブルース・ウィリスを見たい人のための映画であり、ブルース・ウィリスの新たな側面を期待するのだとしたらちょっと肩透かしを食らうハメになると思います。


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