作成者別アーカイブ: 牧村蓋世

火の山のマリア

この映画のテーマとなっているのが、南米の先住民族であるマヤ人。メキシコ南部から中央アメリカ北部にかけての地域に居住するアメリカ州の先住民族であり、多数派のスペイン文化に大きく影響を受けつつ伝統的な生活を続けています。「マヤ」と聞くと即座にマヤ文明を想起する通り、紀元前後から16世紀頃までスペインの侵略を受けるまでの大文明を築いてきた人たちのことです。そのマヤ文明の歴史をたどってみると、3世紀には低...[続きを読む]

コロニア

本作は、一度入ったら二度と出られない狂信的組織からの脱出劇という触れ込みですが、注目すべきは脱出した若い男女よりも、その組織「コロニア・ディグニダ」そのものだと思います。狂信的という意味合いからすれば、誰もがかつてのオウム真理教事件を思い出しますね。そのイメージとして、彼らは一般社会から隔絶した地域で、強大な権力を持ったアイコン的存在のもとで独自の集団生活を営み、日々、神との邂逅だとか超常現象の発...[続きを読む]

ソハの地下水道

この映画は、第2次世界大戦におけるナチス・ドイツによるユダヤ人迫害を描いた作品です。ヨーロッパ各地に散らばったユダヤ人は、発見されるや強制収容所に連行されるなどの悲劇を被っていたのですが、現地の心ある人たちによって匿われて迫害から逃れることができた人たちもいました。本作もそうしたエピソードのひとつ。ポーランドのルヴフにて、下水修理業者であるレオポルド・ソハが、ユダヤ人を下水道内に誘導し潜伏生活の手...[続きを読む]

アンノウン

男性が女性に惹かれる理由、女性が男性に惹かれる理由はさまざまあると思いますが、端的に言ってしまうと「異性だから」に落ち着くと思います。別に同性愛者を否定しているわけではありませんが、やはり人間のみならず他の生物でも男女の区別はあり、それぞれが交わって子孫を残していかねばならない宿命を背負っていることを考えると、性的魅力が前提に立たないと惹かれるものも惹かれないと言えるのではないでしょうか。もちろん...[続きを読む]

ラ・ラ・ランド

ラ・ラ・ランド

いつも利用しているスーパー、時間つぶしで入った喫茶店、帰り道に通る商店街、本当は行きたくない歯医者など、その空間に足を踏み入れてふと気づくことがあります。それはBGMの存在です。お店の業態によって存在感はまちまちで、ひたすら軽快でテンポの良い曲を流すところもあれば、これでもかと言うくらいがなり立てるようなところもあり、また教えてくれないと気づかないくらいひっそりと流しているところもあったりします。...[続きを読む]

メニルモンタン 2つの秋と3つの冬

メニルモンタン 2つの秋と3つの冬

「ドラマみたいな恋」したことありますかって聞かれたら、即座に「ありません」と答えます。いえ、恋愛自体はしたことあります。でも、その恋愛が「ドラマみたい」だったかと思い返すと、何ひとつ思い当たる節がなく、ため息をついてしまいますね。僕はどちらかと言うと、と言うか圧倒的に片想いだったので、確実に振り向いてもらえない状況の中、辛い気持ちに身を貫かれるケースばかりで、起伏どころか急降下しかない恋愛遍歴。そ...[続きを読む]

クロエの祈り

クロエの祈り

パレスチナとは、現代のパレスチナ国の領土としてのヨルダン川西岸地区とガザ地区を含めた地域のことですが、もっと広い意味ではイスラエル、パレスチナ自治区、ヨルダン、レバノンとシリアの一部を指します。で、パレスチナ人とは、ヨルダン川より西の、現在のイスラエルとパレスチナ自治区に居住している人々のことを言うようです。聖書で「乳と蜜の流れる土地」と称えられたこの地は、十字軍やナポレオンの遠征など世界史の舞台...[続きを読む]

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店

僕が小学2年生くらいの頃、いつも遊んでいた友だちと、ふとしたことで「死んだらどうなるんだろうね」という話題になったことを覚えています。もちろん、10歳にも満たない子供が話す内容なので、どうして死ぬのかとか、なぜ死ななければならないのかといった死に至る前提は一切スルーで、単に未知の世界に対する冒険気取りかつ面白半分でした。詳しくは覚えていませんが、おそらくは漫画やアニメで観た天国や地獄の様子とか、透...[続きを読む]

ラスト・キング 王家の血を守りし勇者たち

ラスト・キング 王家の血を守りし勇者たち

ノルウェーについて知っていることと問われれば、ただ漠然と「ヴァイキングの国ですね」と答えるくらいの知識しかありません。そのヴァイキングにしても、粗野で暴力的な海賊という偏った印象しか持ち合わせておらず、そのためどことなく感情的で攻撃的な国民性なのかなと一方的に思い込んでいる次第です。歴史においては言うに及ばず、地理についてもほとんど無知識で、北欧の一国であることは間違いなく認識しているものの、スウ...[続きを読む]

東ベルリンから来た女

東ベルリンから来た女

ヨーロッパ旅行中、ベルリンの壁を見に行きました。それが、ドイツのベルリンという都市を東西に分断するためにそびえ立っているものだということは幼い頃には何かで知っており、学生になってから、その壁がハンマーで叩き壊わされる映像が頻繁にテレビで流れたのを強烈な印象とともに記憶しています。なので、僕自身がリアルタイムで見聞きした歴史をこの目で見られるということに興奮していたのですが、実物を目にするや、高速道...[続きを読む]