カテゴリー別アーカイブ: さ行

スイミング・プール

何かを書いている最中、当初思い描いていた展開とはまるで違った方向へと筆が勝手に進み、そのまま予期していなかった結末に至ってしまうことがよくあります。それは、何も考えず思いつきで何かを書きだした時よりも、書く前にプロットや登場人物像を綿密に設定した時のほうがその傾向は顕著に現れるのです。その理由としてよく言われているのが、ストーリー・人物設定が徹底的に練りこまれた物語というものは、その時点ですでに登...[続きを読む]

三国志英傑伝 関羽

日本人の三国志好きはもう語るまでもないでしょう。漫画やゲームでは三国志を扱ったタイトルが山ほどあるし、本屋に行けば数多くの関連本を手にすることもできます。また、知り合いの中で必ず3人は三国志ファンがいるはずです。三国志に染まるのは中学か高校くらいの少年期で、その多彩なキャラクターと壮大なストーリーの虜になるという過程は、もはや大人への通過儀礼と言ってもいいかもしれません。かくいう僕もそうした三国志...[続きを読む]

潜水服は蝶の夢を見る

小学校3年生か4年生の頃だったかと思いますが、友だちと小学校近くの公園で遊んでいた時のことです。その公園は野球場とサッカー場が併設された地区でいちばん大きな公園で、休日はもちろん、平日でも放課後ともなればそこかしこから子供の甲高い声が聞こえてくるほど人気の場所でした。そこはどちらかと言うと運動場がメインで、ブランコやジャングルジムなどの遊具が設置されたエリアはやや離れた小高い丘の上にありました。と...[続きを読む]

ザスーラ

いま私たちが住んでいるこの地球に、まだ誰も足を踏み入れていない辺境の地はどれほど残されているでしょうか。ここで言う辺境とは、ジャングルの奥地にある手付かずの自然だとか、深海で営まれる未知の生態系だとかのことではなく、純粋に現代社会で詳らかになっていない文明や文化が息づいている地域のことです。よく地球最後の秘境などと称されるギアナ高地にしても、そういうキャッチコピーが付く時点で観光地化している証左で...[続きを読む]

シカゴ

シカゴという街は一度も訪れたことがないため、そのイメージとして、どうしても「マフィア」「ギャング」といった映画の舞台そのものを連想してしまいます。その主因が「アンタッチャブル」。密造酒をめぐってアル・カポネ一味とFBIが闘いを繰り広げる作品で、ラストで描かれるユニオン・ステーションでの乳母車の一幕は映画ファンならずともご存知なはず。こんなイメージしかないので、僕にとってシカゴとは今でも昼夜問わず銃...[続きを読む]

ショーシャンクの空に

それまでごく普通の生活をしていたのに、ある日ふと魔が差して何かの罪を犯してしまい、刑務所で長期間服役することになったとします。所内では、犯した罪に対する悔恨の情と被害者への謝罪の気持ちを胸にしつつ、刑務官の指示をよく守り、また他の受刑者とトラブルを犯すことなく、日々の作業に取り組みます。その後、そうした真面目な態度が認められ改悛の意思があると判断されたため、仮釈放がかなったとしましょう。その際、こ...[続きを読む]

サラエボの花

その複雑な民族構成からモザイク国家と言われたユーゴスラビア。1990年近くになってソ連が民主化へと舵を切りだすと、東側諸国を中心に共産主義が否定されはじめ、ユーゴスラビアにおいてもセルビアやクロアチア系などが民族自決を唱えだします。そんな中、セルビア共和国のミロシェビッチ大統領がアルバニア系住民の多いコソボを併合しようとすると、コソボは反発して独立を宣言。これをきっかけにユーゴスラビアは内戦状態に...[続きを読む]

ジュリエットからの手紙

この映画の舞台となったイタリア・ヴェローナは、半日もあれば歩いて回れるほど小さな町なのですが、とある目的が理由で観光客が途絶えることがないとのことです。その目的こそ「ジュリエットの家」。イギリスの劇作家シェークスピアが書いた悲劇「ロミオとジュリエット」のモデルとなったことで、実話でないにもかかわらず、悲劇のヒロインはいまも全世界から慕われているのです。そのジュリエットの家を来訪する理由が、自身の恋...[続きを読む]

スリーデイズ

まったく身に覚えがないのにも関わらず事件の容疑者として拘束され、ろくな裏付けも取らず乏しい情況証拠だけで犯人と断定されるケースが多々あります。これまで善良な生活を送っていた無実の市民がいきなり犯罪者される場合、テレビなどでは「誤認逮捕」あるいは「冤罪」として混同して報道されますが、そもそも両者は異なる用語です。誤認逮捕は、逮捕行為の対象を誤った場合に使われる用語で有罪か否かは未決の状態。冤罪は、無...[続きを読む]

ソルト

海外に行くことがしばしばあります。アジア諸国ではほぼ間違いなく「日本人デスカ?」と言われるのですが、欧米を中心としたその他の国では「Chinese?」とか「Korean?」と見られることが多いです。典型的な日本人と言われる僕がそうなのですから、他の日本人ならなおさらなのではないでしょうか。あまりいい気持ちはしませんが、考えてみればこれは仕方のないことだと思います。僕自身も海外で日本人を中国人だと見...[続きを読む]