バチカンで逢いましょう

初めは確固とした目的を持って実行に移したものの、その過程において思いがけなく遭遇した事柄によって、まったく別の方向へと舵を切りだしてしまうということは、日常生活でも往々にして起こり得ること。たとえば、手袋だけを買うつもりでデパートに行ったらスーツ一式買い込んでしまったり、様子見程度で企業訪問してみたら社風がすっかり気に入り十数年お世話になることになったり。こういったことは、驚くべきことではなく逆に...[続きを読む]

カリフォルニア・ダウン

3.11の東日本大震災、大混乱に至った被災地の中で、住民たちが暴動や略奪ひとつ起こさず救助を待ったり、整然と列に並んで食事の配給を受けたりする姿が世界中で賞賛されたという話をメディアを通して報じられました。たしかに、その通りだったでしょう。強い忍耐のもと秩序を乱すことを嫌う日本人は、緊急時においても、他人を押しのけて我先にと退路を確保したり物を奪ったりすることをしないということは、同じく日本人であ...[続きを読む]

ボーン・アイデンティティー

僕はふとしたことで物忘れをすることが多く、いまさっきまでやろうとしていたことが「あれ、何だったっけ?」となることがよくあります。ネットであれ調べてみよう、本屋にプログラミング関連の本を探しに行こう、スーパーに靴下を買いに行こう、銀行のATMでお金を下ろしに行こう、なんてことをしょっちゅう忘れます。ひどい時には、ちょっと先の計画はもちろんのこと、考えついた数秒後に忘れるなんてことも珍しくありません。...[続きを読む]

SMOKE

大学生の頃、日記を付けていました。日記と言っても、毎日欠かさずその日あったことを記述していくスタイルではなく、特別思うことがあったり、書き留めておきたいことがあった時に綴るという程度だったので、本来の意味での日記ではなかったのかもしれません。でも、当時(いまでも)かなり内向的で疑心暗鬼に苛まれ続けていた僕にとって、書き殴ってはどんどん増えていくノートの数が慰めのように思えていたことは事実。初めこそ...[続きを読む]

ダンテズ・ピーク

僕がかなり小さかった頃のことですが、ドーンドーンという破裂音とともに、空気が振動するという現象が発生したことがありました。始めは、弟が2階でふざけて飛び跳ねているのかと思いましたが、それにしては音は遠いところから聞こえてくるし、何より空気が震えていることの説明がつきません。テレビを付けてみたら、理由はすぐに分かりました。大島の三原山が噴火したとのことでした。僕の実家は房総半島にあるのですが、物質的...[続きを読む]

主人公は僕だった

短編、長編に限らず、小説を書く際にしてはならないことがあります。それは、プロットを組み立てずに書き始めてしまうこと。プロットとは、簡単に言えば「物語の構成を示した設計図」のことで、人によっては詳細なあらすじと捉える場合もあります。もっと細かく定義すると、シーンごとに起きるイベントや登場人物同志のぶつかり合いの設定、起承転結または序破急(冒頭、ヤマ場、どんでん返し、結論)の明確化、文章に緩急をつける...[続きを読む]

Mr.&Mrs.スミス

夫婦喧嘩のよくある原因として、「言葉使いや物言い」「生活態度」「家事」「金銭」などがあげられるそうです。これは別に夫婦に限らず、家族や恋人、また友人の間においてもあり得ることではありますが、やはり、まったくの赤の他人同士が法律上固く結ばれた関係となった夫婦の場合では、様相を異にするわけです。僕は独身なので実感ではなく想像でしか言えませんが、恋人や友人という関係と比べて、世間の視線がまったく別のもの...[続きを読む]

マイノリティ・リポート

「新宿の母」というのに代表されるように、よく当たると評判の占い師がそこらかしこにいて、恋愛や仕事などの運勢を占ってもらうために長蛇の列を作るとか、場合によっては数か月待ちなんていう話を耳にします。本当に当たるからなのか、はたまたメディアで大々的に取り上げられたからなのかはわかりませんが、僕は自分の人生を知るために占い師を訪れたこともなければ、占ってもらおうと思ったこともありません。朝のテレビでスポ...[続きを読む]

生きてこそ

僕は雪が軒下にまで積もる地域の出身でもなければ、年一度か二度の大雪で電車遅延に立ち往生する東京に住んでいるので、特別雪を怖ろしい存在と考えてはいません。いやむしろ、雪の予報が出ると、子供のように胸を躍らせるほどで(さすがに大はしゃぎはしませんが)、何かしらのイベントのように捉えているフシがあります。雪が降ったら、特別の防寒用のコートを着て、普段は使わないニット帽を被り、滑り止めの付いた靴を履く。そ...[続きを読む]

ザ・シューター/極大射程

ひと言に銃といっても、さまざまな種類があることはよく知られたこと。日本に暮らしている以上、現実にそれらの区別ができるほど銃を目にする機会はほとんどないわけですが、そんな中でも一番認知度が高いのは、「拳銃」と呼ばれるもの。ピストルや短銃、ハンドガンなどと呼ばれることもあり、日本では警察官や特別な公務員だけが公に携帯することが許されています。海外では護身用として一般市民が所持することは珍しくないようで...[続きを読む]