ハンター

オーストラリアのブリスベンという街で、短期間のホームステイを経験したことがあります。名目上の目的は語学学習でありましたが、ほんの限られた期間で英語のセンスが身に付くはずもなく、8割方は観光気分。で、それまで英語圏へ渡航したことがなかった僕がなぜオーストラリアを選んだのかというと、アメリカより治安が良く、カナダよりも物価が安く、フィリピンなどではリアルな英語圏文化を味わうことができないからという理由...[続きを読む]

突入せよ!「あさま山荘」事件

僕が中学の頃、ソ連が崩壊しました。それまではアメリカとソ連という超大国が西側と東側とで世界を二分し、それぞれの政治経済体制である資本主義と社会主義を大義として掲げ、戦争(熱戦)という手段を駆使しない陣取り合戦を繰り広げていました。これを冷戦時代と言いました。第二次大戦後、急激に勢力を拡大してきたソ連によって世界が赤化するのを防ぐため、アメリカは日本や欧州西側諸国に資本主義の恩恵を目一杯振りまいて経...[続きを読む]

エリックを探して

僕が大学生の頃でしたから、もうずいぶん前のことです。その当時街で見た看板でいまだにはっきりと記憶に残っているものがあります。場所も明確に覚えていて、渋谷のスペイン坂。パルコの入口と正対する格好で設置されていたと記憶しています。誰の目にもつく巨大な看板は音楽CDの新譜の販促用で、ポーズを決めたロックミュージシャンに被さるように、とあるキャッチコピーが添えられていました。そのキャッチコピーとは「浜田省...[続きを読む]

ウィンターズ・ボーン

まずびっくりしたのが、この映画の主人公リーの年齡が17才という設定だったこと。僕はてっきり、一緒に住んでいる小さい男の子と女の子の母親がリーなんだろうなと思っていたのですが、お姉さんだったとは思いも寄らず、しかもまさかのハイティーン。これが日本人だったら、原宿あたりで買ったピンク系のフリフリの洋服を着て街ゆくイケメン男子に熱視線を送る純朴な子供にすぎないのですが、リーの表情からうかがえるのは、そん...[続きを読む]

キング・コング

結論から言えば、とても面白い映画でした。「ジュラシックパーク」をほうふつとさせる圧倒的な映像表現と、シンプルなストーリーの中にも人間と獣の心の結びつきを表現した巧みな演技力など見どころは非常に多く、3時間という長尺ですがもうちょっと長くても良かったなというのが本音です。この作品は1933年にアメリカで上映された初代のキングコングをリメイクしたものですが、監督のピーター・ジャクソンはこの初代キングコ...[続きを読む]

エターナル・サンシャイン

嫌な記憶をきれいさっぱり忘れてしまいたいと願うのは誰だって同じことです。体験としてはもう済んだことなのに、その嫌な記憶がいつまでもついて回って楽しいことも楽しいと思わせてくれなかったり、ある程度落ち着いた頃合いにふとしたことで浮き上がってきて精神を不安定にさせられたり、感情の襞にしがみついた負の記憶はなかなか忘却の彼方に消えていってはくれません。とは言え、その場できれいさっぱり忘れられることができ...[続きを読む]

バビロンの陽光

この映画は、2003年にアメリカが引き起こした戦争によってサダム・フセイン政権が崩壊した後のイラクを描いた作品です。それで主人公も当然イラク人だと言いたいところですが、行方不明の父イブラヒムを捜すアーメッドとその祖母は北部クルド人居住区の出身。つまりクルド人です。彼らはヒッチハイクをしたりバスを乗り継いだりしながら、イブラヒムが収容されているとされるナシリヤを目指しますが、その間、クルド語が通じな...[続きを読む]

私の中のあなた

僕は生まれてこの方、一度も大きな病気をしたことがなく、当然のことながら入院したこともありません。そもそも鼻血を出したことがないという時点で、超健康優良児というより単に物理的な争いを避けてきた軟弱者と捉えられるかもしれませんが(あながち間違っていません)、風邪はしょっちゅう引くものの手術が必要な大病やリハビリに専念しなければならないほどの不自由とは無縁な人生を送って来られています。僕自身、どちらかと...[続きを読む]

エンド・オブ・ホワイトハウス

アメリカのワシントンDCに観光に行った時、やはりいちばんの目当てはホワイトハウスでした。ニューヨークから高速バスでワシントンDCのユニオン駅に到着し、スミソニアン系の博物館・美術館をいくつか回ってからリンカーン記念館まで足を運び、観光最後の締めにホワイトハウスへと向かいました。ワシントンDCの主な観光名所はほぼひとつのエリアに固まっているとはいえ、なにせひとつひとつの区画が広大なので、ホワイトハウ...[続きを読む]

PARIS

本屋にふらっと入って所在なく旅行書のコーナーに行き着くと、無意識のうちに手が伸びているのが「フランス」のガイドブックです。フランス、それもパリについて記述された箇所は気がついたら熱心に眺めていて、観光地や街の様子をとらえた写真をじっと見つめていたり、種類のあるバゲットやチーズを見比べたり、東京からの飛行時間や各地への交通を調べたりしてしまっています。ところで、僕はパリには行ったことありません。なの...[続きを読む]